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大好きな令息が親友でいたいと言ったから  作者: 鈴木べにこ


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12/18

ルートB.アンディ鉄格子のある病院ルート

 1年後。


 空は抜けるような青だった。


 王都中の鐘が祝福を告げるように鳴り響いている。


 今日は、ジョゼット・ハーヴィー伯爵令嬢とオリバー・ベアード伯爵令息の結婚式。


 社交界でも有名だった“仲の良すぎる親友”ジョゼットとアンディ。


 その長すぎた関係が終わりを迎え、ジョゼットが本当の意味で前へ進む日だった。




「お綺麗です、お嬢様・・・。」



 侍女が感極まったように呟く。


 ジョゼットは鏡越しに少しだけ照れたように笑った。


 純白のウェディングドレス。


 繊細なレース。透明感のあるヴェール。


 豊かな金髪は丁寧に結い上げられ、碧い瞳は穏やかな幸福で揺れていた。



「ありがとう。」



 控え室には柔らかな空気が流れていた。


 あと少しで式が始まる。


 もうすぐオリバーが迎えに来る。


 ジョゼットは胸元へそっと手を当てた。



「(ここまで来れたのね・・・。)」



 アンディとの関係に苦しみ続けた日々。


 好きだった。


 子どもの頃からずっと。


 けれどアンディは“親友”を選び続けた。


 だから自分は前へ進んだのだ。


 オリバーはそんな自分を受け止めてくれた。


 アンディを忘れられなくてもいいと。


 少しずつでいいから自分を見てほしいと。


 その優しさに救われた。


 もう迷わない。


 そう思った瞬間だった。


 ――バンッ!!


 突然、控え室の扉が乱暴に開いた。



「ジョゼット!!」



 侍女達が悲鳴を上げる。



「ア、アンディ!?」



 そこに立っていたのはアンディだった。


 銀髪は乱れ、目は血走っている。


 顔色も酷い。


 まるで何日も眠っていないようだった。



「ここに何しに来たの?」



 ジョゼットは呆然と彼を見る。


 だがアンディは一直線にジョゼットへ駆け寄った。



「ジョゼット!一緒に逃げよう!!」


「・・・・・は?」



 意味が分からなかった。



「何を言ってるの?」


「僕、全部間違ってたんだ!やっと気付いたんだよ!」



 アンディは必死な顔でジョゼットの手を掴む。



「僕にはジョゼットしかいない!だからオリバーなんかじゃなくて――」


「アンディ。」



 ジョゼットの声が低くなる。



「今日は私の結婚式よ?」


「だから止めに来たんだ!」


「・・・どうかしてるわ。」



 ジョゼットは本気で眉を寄せた。



「今さら何を言ってるの?」


「今ならまだ間に合う!」



 アンディの目は異様だった。


 焦燥。執着。恐怖。


 まるで壊れかけている人間の目。



「アンディ、離して。」


「嫌だ!」


「離しなさい!!」



 ジョゼットが振り払おうとする。


 だがアンディは強引にジョゼットを抱え上げた。



「きゃっ!?」



 次の瞬間。


 アンディはジョゼットを肩に担ぎ、そのまま控え室を飛び出した。




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