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今日はバレンタインデー。
私はこの日のために最高の心と愛を込めて、夫に渡すチョコレートの箱を準備した。
そしてその箱は今···
私の目の前にある!!!
夫と恋人になってからは、いつもバレンタインデーには朝チョコレートを渡していた。
私が朝チョコレートを渡す理由は···
彼が一日中私のことだけを考えてくれることを望んでいたから。
愛する人の頭の中を一日くらいは独り占めしてほしいという願いだった。
夫は私のこの愛情表現を快く受け入れてくれた。
チョコレートの代償は愛情のこもったキス。
お互いの愛を確認するその瞬間が、私が2月を待つ理由の一つだった。
そうだ。
これは去年までの話。
今日の私は···わざとチョコレートを渡さなかった。
これは私の小さな腹いせ。
その理由は、当然のことだが、先日生じた夫への疑念のためだ。
ある夜、盗み聞きしてしまった殺伐とした通話内容。
そして、その時に生じた疑念は、夫の不審な行動によって確信に近づき始めた。
「愛し合う関係」という前提のもと、これまで積み重ねてきた情があるから、堂々と質問すれば夫が親切に説明してくれるだろうと思っていたが······
今、夫は政府のスパイかプロの殺し屋かもしれない状況だ。
これは安易に考えるほど単純な状況ではない。
したがって、夫の真実に近づくためには慎重になる必要がある。
愛する人を疑う気持ちは重い。
しかし、多くの秘密が積み重なった今、私は彼を疑うしかない。
慎重に。
そしてゆっくりと···
私は真実に近づく。
そしてその次は···
「その次は···どうすればいいんだろう···。」
食卓に置かれた赤い箱を見ながら吐いた独り言。
頭の中が複雑になる。
もし夫が疑った通り、闇の職業を持つ恐ろしい人なら、言葉で説得して教化させるつもりだった。
私なら可能だと思った。
どんなに冷徹な暗殺者であっても、結局は人間。
その間の愛情行為である程度心が溶けたはずだから!!
それで今日私は意地悪をしようとした。
チョコレートを渡さないことで、彼に私が不満を持っていることを知らせようとした。
私を愛する夫としても、ターゲットを容赦なく処理する冷酷なキラーとしても···私のこの小さな行動の変化に気づくはずだと確信していた。
だから今朝は、わざと重い雰囲気を演出しようとしたのですが···。
「なんでいつものように出勤しちゃうの!?」
そうだ。
夫は簡単な挨拶だけを残し、急いで家を出た。
何よりも私を困惑させたのは、今日が特別な日でないかのように振る舞ったこと!
まるで最初からバレンタインデーが存在しなかったかのように!!
愛が冷めたのか!?
それともこれが噂の倦怠期!?
何であれ私は腹が立つ。
これではむしろ私が夫に一発食らった格好だから!!!
「くやしい!!なんでいつも私だけやられるの!?」
悔しさが最高値に達した私は、チョコレートの箱を持ち上げて壁に投げつけた!
と想像しながら、冷蔵庫に入れた。
溶けたらダメだから!
何よりも、チョコレートは保管を間違えると味も変わる!
だから、夫が来るまで大切に保管...
「ダメ!!! これでは徹底的にバレンタインを祝うんじゃないの!?」
独りだけの絶叫。
幸い、ここに私の情けない叫びを聞く人はいない。
「はあ··· あまりにも情けない··· 今はもっと冷徹にならなければならないのに···。」
その時、冷蔵庫の扉の上に貼ってある夫と一緒に撮った写真が目に飛び込んできた。
小さな紙の上に記録された大切な思い出。
あの頃の私は、おそらくこの世の誰よりも幸せだったと思う。
夫と一緒にいる今も幸せだけど、私はあの頃の平和が欲しい。
「ねえ、あの頃の私...あなたが今の状況を知っていたら··· どうしたと思う?」
過去の自分に投げかけられた質問。
そこに...いつか夫から答えが聞けたらいいなという願いを込めた。
(ピリリリリリ)
じっと一人の考えに没頭しようとした瞬間、突然かかってきた電話が静寂を破った。
発信者を確認した私は迷わず電話に出た。
「アカネ?」
「うん、ひまり! ちょっといいかな?」
「もちろん! どうしたの?」
私は今の憂鬱な気持ちを隠そうと、もっと活発な声で答えた。
「前に言ってた作業室見学のことだけど...来てもいいって許可をもらったんだ!」
「本当なの!?」
「うん! それに、当分は暇な予定だから、もし暇になったらいつでも遊びに来てもいいって!」
「アカネが呼べばいつでも遊びに行くよ!」
「じゃあ、今すぐこっちに来る?」
「え?」
*
アカネの突然の招待。
実はそれは私にとってとても嬉しいことだった。
複雑な気持ちで家にいるだけではストレスが溜まるのは目に見えていたから。
私は逃げるように家を出て、そのままアカネが教えてくれた住所に書かれた場所に向かった。
少し薄暗い路地。
周囲がひどく静かではあるが、人通りが少ないわけではないので怖くはない。
それに私は大人だ。
やっと閑静な路地に入った して怖がるほど甘くはない!
「あの······。」
「キャアアアアアアアア!!」
声が聞こえた方向には、きちっとしたスーツ姿のあるハゲのおじさんが立っていた。
太くて丸い眼鏡のフレーム。
しかも整った豊かで濃いヒゲ。
突然現れて私を驚かせたこの人は、全体的にかなり洗練された姿をしている。
香水の匂いまで漂っているところを見ると、外見の手入れに相当力を入れているようだ。
「すいません! 驚かせるつもりはありませんでした!」
頭を下げて謝る彼に、私も一緒に頭を下げた。
「あ、いえいえ! 私も急に叫んでしまってすみませんでした!」
「も...もしかして...ひまりさんですか?」
「え? そうなんですけど...もしかしてアカネの...?」
「あ!そうです!! 初めまして!! 僕はサトルと申します。アカネさんからひまりさんの見送りを頼まれて出ていたのですが···不本意ながら失礼しましたね...。」
自分をサトルと紹介する巨大な体の男···
最初は少し怖かったが、彼の目を見た私の恐怖心は一気に消えた。
なぜなら...
彼の目が魔法少女の目のように輝いていたから!
「あ、いえいえ!私も訳もなく緊張したので··· 本当にすみません!」
「ハハハ!やっぱりアカネさんの友達らしく思いやりが溢れていますね! それでは今すぐスタジオにご案内いたします。」
「はい!」
サトルさんを追いかけて入ったのは、ある灰色の鉄の扉。
固く閉ざされたその扉は、一見頑丈に見え、内部からの音を完全に遮断していた。
サトルさんはノックするためにドアにそっと手を近づけた。
穏やかなハンドジェスチャー。
そして次の瞬間、過激なノック...
いや、殴り始めた。
「ドア開けろ!!!!」
「……え?」
すごいエネルギーが込められた叫び声。
山や洞窟から聞こえてきそうな響きが路地に響き渡った。
サトルさんは私に向かって振り返り、頭を下げた。
「すみません。 呼び鈴が故障したため、このような野蛮な方法でなければドアを開けることができません。」
「あ···… はい。」
サトルさんの謝罪が終わる間もなく、ドアはドアノブが回る音とともにゆっくりと開いた。
「ねえ...サトルさん...ドアに着いたら電話かメールしてくださいよ...周りに迷惑ですよ...。」
ドアを開けてくれたのは、肩まで届く長い黒髪のかなり痩せた男性だった。
「ところで、隣の女性は...。」
彼のぎこちない視線が私の方を向いた。
「この方が、アカネさんが言っていたひまりさんだ!さっさと挨拶しなさい!!」
先ほどまでとは全く違うサトルさんの雰囲気。
初めて会ったときの優しさはどこにも見当たらない。
今はまさに熱血そのもの!
活き活きと燃え上がる炎のようなエネルギーが感じる。
「あ、こんにちは...サヌキと申します。」
「初めまして!私はひまりと申します!」
サヌキさんはじっと目を閉じ、頭を下げて私のあいさつを受け入れた。
「さっさと入ってください。 これ以上サトルさんを外に置いたら、声のせいで通報されますよ...。」
「ハハハハハハハ!私の声がそんなに大きかったのかな? しかし、この程度の騒音では問題ない!? ここは東京のど真ん中だからね!ワハハハハハハハハ!!」
「問題多いんですが。」
聞き覚えのある冷たい声。
これは確かに怒ったアカネの声だ。
「オイオイ~!アカネさん! もう帰ってきたの!?
「小さい声でもよく聞こえるので、声を小さくしてください。」
「どこへ行ってきたの!?ひまりさんは私がしっかりエスコートしたから心配しないで!! ワハハハハハハハハ!
「静かに....」
サトルさんの前に立ったアカネは拳を握りしめた。
そして腰を回し、全身の力を拳に込めた。
「やれって!」
アカネの拳は正確にサトルさんの腹部の側面に突き刺さった。
ドーン!
僅か一発のパンチに、サトルさんの両膝は抵抗する間もなく、同時に床に触れた。
(ネットで見たことある!!これはリバーショット!!)
床に倒れ、まるで溺死寸前の猿のように息を切らしているサトルさんの心配よりも、アカネが正確かつ強力なリバーショットで自分より巨大な体格のサトルさんをひざまずかせたことへの感嘆が先立った。
(アカネ......一体いつからこんなことを...一体大学を卒業してから何があったんだ!?)
アカネは床に倒れたまま、ぶるぶる震えるサトルさんを後にして私に近づいた。
「ひまり!よく来てくれたね! ごめんね、急に用事ができてちょっと交番に行ってきたの!」
いつものように柔らかな声。
私の手を握って私を歓迎するアカネの声には、少し前のカリスマは見られなかった。
「えっ、なぜ交番に?」
「このバカタコのせいだよ。」
「え? バカタコなら...。」
サトルさんには申し訳ないが、私の視線は自然と下を向いた。
「無駄に声が大きいせいで、また住民の通報が入ったみたいだよ。サトルさんじゃ、話が通じないだろうから、私が代わりに行って謝ってくるところだよ。(今回もね)。」
下を向くアカネの冷たい視線。
首を上げて懸命に微笑むサトルさんの体は、まだリバーショットの衝撃で震えていた。
「あ、ごめんね、アカネさん! 次からは気をつけるよ......!」
親指を立てて微笑むサトルさん。
アカネはため息をつきながら首を横に振った。
「とりあえず入るか、ひまり? これからは私も一緒だから大丈夫だよ。」
「う、うん...。」
強烈な第一印象のせいかな...
アカネの同行にもかかわらず、スタジオに入る足取りが重い。




