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206.ローレンの森の浄化(1)

アリエスの月の半ば、いよいよ最後の浄化をするために私はローレンの森に赴いた。側にはノヴァ様とハルトさんもいる。


魔道具のお披露目を終えてから浄化の日まで間が空いてしまったのは、ディーノさんが主な原因だ。ディーノさんが毎日ローレンの森で魔獣の討伐をしていたので中々決行できずにいたのだ。


けれど昨日お父様から「明日浄化を決行して良い」と伝えられ、ディーノさんは大丈夫なのかと聞けば明日ディーノさんは森に行くことはないとのことだった。変な言い方だったけれど、森に行かないのであれば好都合なので私はその場で了承した。


ノヴァ様とハルトさんも同行するのは、森の中心地はSランク魔獣であるブラックフェンリルの縄張りであるため万が一に備えるためだ。というのも、中心地に一人で行くとブラックフェンリルと戦闘になる可能性があり、ミヅキに分身して戦うと浄化のための魔力がなくなってしまうため、浄化どころではなくなる。だから代わりに2人に戦ってもらうのだ。でも念のため動きやすいように今日私は訓練着を着て長い髪も上の方で一つに束ねた格好をしている。


本当はハルトさんに同行をお願いしていたんだけど、お父様から聞いたのかノヴァ様はここのところ忙しいはずなのに私に付いて行くことを譲らなかった。むしろ「何故俺に言わない?」と拗ねられてしまった。ノヴァ様が拗ねるところなんて見たことがなかったから一瞬フリーズしたよね。


そしてドラゴンの魔石で新たに作った「魔力隠蔽」と「スキル無効」が付与されたネックレスとピアスを身に着けた私は、朝食を済ませるとノヴァ様と一緒にハルトさんとの待ち合わせ場所であるヴェルソー領側のローレンの森の入口付近に転移した。


前回のヘレネの森の浄化時はハルトさんにも隠蔽魔法をかけ透明人間化させたけど、今回はブラックフェンリルと戦闘になることが予想されるため、ノヴァ様とハルトさんには隠蔽魔法をかけない。


なので待ち合わせ場所から少し離れた茂みに到着してすぐに、私は自身にのみ隠蔽魔法をかけた。


ローレンの森に入っていく屈強な冒険者たちが見える。


「あ、いました、ハルトさん」


森に入る場所に魔法師の黒いローブを着たハルトさんが仁王立ちでいるため、依頼を遂行しに来た冒険者たちが皆ハルトさんの横を通るたびに恐縮というか恐れを通り越して縮み上がっていた。無理もない。ハルトさんは三大公爵家の令息で魔塔主兼魔法師団長なのだから。


こう並べると凄い肩書だわ。本人はちょっと年齢と中身が合っていない感じなのに。


「行こう。ディアナは俺の後ろに」


「はい」


私は返事をして茂みから出るノヴァ様の後に続いた。


「お、来たか」


入口に近づいたところでハルトさんがノヴァ様に気づき挨拶した後、「ディアナ嬢はそこにいるんだよな?」と見えない私に向かって小声で声をかける。


私も小声で「いるわ」と応えた。


「よし、じゃあ行こうか。魔獣に遭遇したら俺とノヴァ殿が相手をするからディアナ嬢は手出し無用な。魔力と体力を温存しといてくれ」


ハルトさんが「リュトヴィッツ殿」呼びから「ノヴァ殿」に変えたのは、この前ハルトさんがうちに来た時にノヴァ様がそう言ったからだ。魔獣討伐ごっこで仲を深めたらしい。


「わかった。気配を消して付いて行くわ」


以前「ミヅキ」がブラックフェンリルを討伐した場所は中心地である縄張りから遠く離れた場所だったため私は中心地に行ったことがない。でも中心地までの座標を唱えれば転移ができるようになったからひゅっと3人まとめて行けるんだけど、ハルトさんがSランクと対峙する前に肩慣らしをしておきたいと言ったので、少し面倒だけど中心地まで歩いていくことにしたのだ。


私との婚約が市井でも噂されているノヴァ様と、魔法師団長であるハルトさんが森にいることに呆然としている冒険者たちをよそに、私たち3人は森の中に足を踏み入れた。


所々で休憩を挟みながらEランク区域、Dランク区域を順調に抜け、Cランク区域でAランク魔獣のユニコーンを見つけたためハルトさんは喜びに満ちた顔で角を傷つけないように魔法一発で仕留めた。ユニコーンの角が状態異常回復薬の素材なので無視できなかったらしい。


Bランク区域まで来るとAランク魔獣に遭遇する確率が高くなり、ハルトさんは魔力を解放して襲いかかる魔獣を討伐していった。ノヴァ様も私を守るように鮮やかに剣を振るって斬り倒していくので、私に魔獣の猛威が迫ることはなかった。


ミヅキとして単独で魔獣を討伐してきて誰も私を守るなんてなかったものだから、誰かに守られていることになんだかちょっとくすぐったい気持ちになった。それが好きな人なら嬉しさも伴ってくる。


森の奥へと進みながら私はハルトさんに今日森に行くことを魔塔の人たちは知っているのかと尋ねると、ハルトさんは「知ってる」と応えた。


「ノヴァ殿と魔獣の討伐してくるって言ったら羨ましがられて付いて来られるところだったから、重めな課題を与えて阻止してきた。ノヴァ殿は?」


「ジュードにしか言っていない」


「ジュ……はぁ、良いなぁ。俺も『ジュード』って呼んでみたい……」


「試しに呼んでみたら?」


「ディアナ嬢って意外と鬼畜だよな。やっぱ総長の娘だ」


どういう意味よ。


でも「総長の娘」って言われて嬉しかった。前世の自我のままだから本当に私はヴィエルジュ家の子として振る舞えているのか気になってしまうことがあるから。ただ「鬼畜」というのは解せない。


すると突然、何かが打ち上がる音が聞こえてきた。


見上げると、北東5km先に黒い狼煙がゆらゆらと上がっている。中心地からやや離れている場所だ。


「黒い狼煙……誰かがブラックフェンリルに遭遇したのか?」


ハルトさんの口調が張り詰めたものに変わる。


まさか、ディーノさん? でもお父様が今日は森に来ないって言っていた。お父様が言うなら間違いない。それに今のディーノさんなら遭遇したとしても救援の狼煙を上げないと思う。じゃああの区域からしてAランク冒険者が遭遇したということかしら。


ただ狼煙が上がったのなら救援にギルマスかディーノさんが来る可能性が高い。


私は焦りを覚えた。

次回は4/30(木)に投稿致します。

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