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204.将来のこと

今魔塔の庭に残っているのは私とハルトさん、数名の上級魔法師たちだ。


彼ら上級魔法師は戦闘ではなく研究職に就いている人たちなんだけど、陛下たちが去った途端、私にサササッと近づいてきて、転移と通信の魔法陣について称賛したり各々の見解を述べてきたりした。


私は魔法をスキルで創っただけなので見解とか解釈とか述べられてとても困った。学院に入学しても困らない程度フェリクス大叔父様に魔法学や魔法陣について習ってはいるけれど、より専門的なことまではあまり理解ができていないのだ。魔法創造スキルに頼っている弊害ね。


とりあえず魔法書に載せた解説を頭に浮かべながらボロが出ないように対応した。ただその解説の内容を奥深くまで掘り下げられるといよいよ限界になる。


助けを請う私の目配せが通じたのかハルトさんが割って入ってくれた。


「あまりディアナ嬢を困らせるな。理論や解釈を求めても無駄だぞ。彼女は感覚でやっているんだから」


どうやらハルトさんは私の魔法創造スキルの力を「感覚」で通すつもりのようだ。


「えっ! 感覚であんな緻密にいくつもの魔法を組み立てられるんですか?」


上級魔法師たちがざわつく。「そんなことが可能なのか?」「天才なの?」「じゃああの魔法書の解説は?」などといった声が上がる。


「彼女の解説では浅かったのでな、俺の魔法解析スキルで得た解説も含まれている」


「その節は大変お手数をおかけしました」


解説なんて私は一文字も関わっていないんだけど、ただ魔法を創っただけとなると本当に13歳の小娘が魔法を創ったのか真偽がわかりづらいことからハルトさんは私にも関わりを持たせたような言い方をしてくれた。私のスキルの存在を隠すためとはいえ、面倒なことをやってくれているハルトさんには足を向けて寝られない。


「まだ学院に行っていないのに魔法を創ってしまえるなんて……総長も鼻が高いでしょうね」


「次はどのような魔法を創るかもうお考えで?」


「その時は是非我らも力にならせて頂きたい!」


「ディアナ嬢でしたら学院に通わずともよろしいのでは? 我々と魔法の研究に勤しんでいくためにも今すぐ魔塔に入って頂くのはどうでしょう?」


え、えっと……


魔法師たちの怒涛の勢いに気圧される。


「落ち着け。これ以上近づけば総長とリュトヴィッツ卿にどやされるぞ」


ハルトさんのその一言で焦った魔法師たちはサササッと2m程後退した。


「卒業資格がないと魔塔には入れないのは知っているだろう? それに陛下からの褒美には卒業後の試験なしの入塔資格も含まれるだろうから、ディアナ嬢の魔塔入りは決定しているようなものだ。わかったら魔道具を片付けて魔塔に戻れ」


魔法師たちは卒業後まで待つのかと少しがっかりした様子だ。


まだ私はちゃんと決心したわけではないのに魔塔に入るのが決定事項なのかと思うと苦笑いが出る。


「ではディアナ嬢、お疲れ様でした」


「ご卒業後、是非お待ちしております」


私は頭を下げて「今日はご協力頂きありがとうございました」と伝え、片付けに行く魔法師たちを見送りながら改めて将来のことを考える。


将来はお兄様を手伝って異世界スローライフを送るつもりだったけれど、お兄様を手伝うのは婚約者のセシリア嬢の役目だから婿養子を取る私は家にいてもお邪魔な存在になるだけだ。それなら領地に引っ込んでノヴァ様と一緒に何か新しく事業をやるか、もしくは王都で別邸を構えて魔塔で国の発展のために魔道具作りを仕事にしても良いかもしれない。選択肢は多い方が良いわよね。


私はハルトさんに向き直る。


「将来家を出ることになるだろうから、選択肢の一つとして魔塔に所属することを考えてみるわ」


「そうか。ま、叙爵は確実にされるから心配しなくて良い。転移と通信魔法の発明だから、子爵か伯爵か……総長は辺境伯の他に伯爵と子爵の位も持っているから成人後はディアナ嬢にどちらかを譲るつもりだと思うが、どちらにしろ良かったな。リュトヴィッツ殿は中継ぎだから将来伯爵の位を前当主の孫に譲る。そうすると爵位なしになるからな。まぁあの強さだ、何か功績を上げればすぐにでも叙爵されるだろうが」


確かにそうだ。ノヴァ様と婚約できたことで浮かれていて爵位のことをすっかり忘れていた。お父様から位を継げる話は聞いたことがないから不確定だけど、叙爵が確実ならあの時ハルトさんに説得されて転移の魔道具を作って本当に良かったと思った。


なので改めてお礼を告げる。


「ハルトさん、今回魔道具作りに誘ってくれてありがとう」


「こちらこそ、貴重な魔法を生み出してくれて感謝している。俺だけではあと何年、何十年とかかっただろうしな」


ハルトさんはグッと伸びをし、肩を回した。


「さてと、あれがあと5つ必要だから今から続きをやりに戻るとするか。ディアナ嬢、もし時間があるなら魔法付与をしていってくれるか?」


良いわよ、と言おうとしたところで背後から「ディアナ嬢」と声を掛けられた。


振り返ると、王宮の方へ戻っていったはずのユアン殿下がいた。少し離れたところに近衛騎士のリュシアンが控えている。


私とハルトさんは揃って丁寧にお辞儀をした。突然の殿下の再登場に内心驚いているけれど。


殿下は朗らかな笑みを浮かべていた。


「邪魔してすまない。せっかくディアナ嬢が王宮にいるのだから直接伝えようと思ってな、戻ってきた」


「? 何でしょうか」


「婚約おめでとう」


「……! ありがとうございます。殿下から祝福を頂けるなど、大変光栄でございます」


「王宮でも君たちの話題でもちきりなんだ。ふ、落胆している者が大半だけどな」


「リュトヴィッツ様は貴族女性に大変人気だとお母様から聞いております」


社交界ではノヴァ様は「宵闇の君」なんて呼ばれているらしい。誰が名付けたのかしら、天才じゃない?


「ふ、リュトヴィッツ殿に対してだけではないぞ。だがまさかディアナ嬢に魔法を開発する力があったとは思わなかった」


殿下がさっきまで転移の魔道具が設置してあった場所に目を向けた。

次回は4/23(木)に投稿致します。

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