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201.魔法師団長がいるので皆で一緒に遊びました

さっそく試そうと、私は好奇心に胸を踊らせながら設置された魔道具の上に乗り、真ん中の円柱に乗ったドラゴンの魔石に手を当てた。


魔道具を発動させるには真ん中の魔石を起点として全ての魔石に6万の魔力を注ぐ必要がある。魔力量が多い人は一人でもできるけど、そうじゃない人の方が大半なので、その場合は6人で1万ずつ注ぐ。一つの魔石に1万の魔力が必要だからね。


1万注ぐと魔石が1つ光る仕組みなので交代して6つ全ての魔石を光らせると転移魔法が起動する。そして転移したい場所を唱える。魔塔で行った実験によると最大15人まで一度で転移できるらしい。


何故そんな疲労が増す起動の仕方にしたかっていうと、誰でも転移できるようにさせないためだ。魔石に魔力があらかじめ充填されていると、転移先を唱えれば誰でもすぐ転移できちゃうからね。転移の魔道具は王家と防衛省と財務省の許可を踏んで初めて使用ができるから起動もちょっと手間がかかるようにしないとということで、当初の予定とは違うけどそうすることになったのだ。


物資の転送の場合もあまりやることは変わらない。最大800kgまで送りたい物をミスリルの台の上に乗せ、代表者6人が真ん中の魔石に魔力を込め全ての魔石を光らせ起動させる。台から降りた後に転送先を唱えれば、台の上の物だけ送られる。真ん中の円柱の魔石に魔力を流した6人の誰かが場所を唱えないと発動しない仕組みなので、まだ人が台にいるのにイタズラで外側から勝手に場所を唱えても転移は発動しない。


私は円柱に乗った魔石に6万の魔力を流すと6つ全ての魔石が金色に輝き出した。


ちなみになんだけど、王宮で実演発表するのは作成者の私なので、魔力を流すと魔石が金色に光ってしまう。そのため、誰が魔石に魔力を注いでも金色に魔石が光るようにあらかじめ魔法陣に組み込むことにしたのだ。また、私が魔力を注ぐ時は魔力隠蔽のピアスが作動するので「ミヅキ」の魔力だと周囲にバレることはない。


私は息を吸い込み、「王都ヴィエルジュ邸の騎士団の器械鍛錬部屋」と力強く唱えた。


すると魔石の金色の光が(まばゆ)く光り、、その光が線と線で繋がっていくと五芒星の形に光が放たれた。


金色の視界の(まぶ)しさで目を閉じる。少しの浮遊感を覚えると、やがて地面に足がつく感覚が戻った。


ざわざわといくつもの驚く声が聞こえてくる。光が収まったのが眼裏でわかり目を開けると、そこはほぼ毎朝使っている鍛錬器具がたくさん置かれ、目の前には上半身裸でダンベルを持っていた筋骨隆々の男性騎士とマットの上で柔軟をしていた男性騎士が目を見開いて静止していた。


「あ、驚かせてごめんね! 転移の魔道具でここに転移して来て……あ、ノヴァ様、ハルトさん、無事転移場所に着きました!」


目を点にしている騎士たちに事情を話した後、手に持っていたピアスを掲げ2人に成功を伝えた。


〈〈わかった。じゃあ俺らも今からそっち行くから〉〉


2人もここに来るということなのでここで待っていようかと思ったけど、上半身裸の騎士が体を手で隠してソワソワしているのを見て、あ、小娘とはいえ婚約者でもない女性に肌を晒すのは恥ずかしいかもと察し、私は一旦部屋から出て2人が来るのを待った。


外には剣の鍛錬をしていた5、6人の騎士がいて、「あれ、ディアナ様いつの間にこちらに?」と首を傾げていた。


1,2分してもまだ2人が転移して来ないと訝しんでいると、ノヴァ様とハルトさんがこちらに向かって歩いて来るのが見えた。何やら2人して真剣な表情で会話をしている。


てっきり2人も転移して来ると思ったけど、よく考えたらそれだと転移の魔道具を置きっぱなしにしてしまうわね。それにしても、あんな真剣に何を話しているのかしら。さっきの天空の神関連かしら。


鍛錬をしていた騎士たちがノヴァ様とハルトさんの姿に気づき驚いた声を上げた。


「えっ! リュトヴィッツ卿と……ヴェルソー魔法師団長!?」


「魔法師団長が今日いらっしゃることは知っていたが……どうして訓練場に?」


「この機会に俺等の相手をしてもらえないかな」


私はその騎士の言葉で閃いた。


「じゃあ、皆で魔獣討伐ごっこをやらない?」


「えっ、よろしいのですか?」


「最近討ば……じゃなくて、ほら、ハルト様もいたら一気に難易度が上がって面白いでしょう?」


「でしたらリュトヴィッツ卿はこちら側でお願いしますよ」


「良いわよ。じゃあ皆準備をしてきてね」


魔獣討伐ごっことは、無詠唱で魔法が使える私が魔獣役となって騎士たちが連携を取りながら攻撃する訓練の一貫でたまにやるものだ。極たまーにお父様も魔獣役をやることがあって、その時は私はお父様の動きを学ぶ形で待機したり一緒に魔獣役をやったりして、これがまた結構面白いのよね。魔獣を浄化し始めてから魔獣を討伐する機会が減ったから、ちょっとワクワクしてきたわ。


「なんだか慌ただしいが、どうかしたのか?」


「あ、ハルトさん、一緒に魔獣役をやってほしいの。ノヴァ様は騎士側で」


「魔獣役? あー……はは、急だな」


「ああ、あれをやるのか」


「ルールは魔法師団でやっているのと同じか?」


「お父様が始めたことだからたぶん同じだと思うわ」


魔獣役が腰と手脚に結びつけた5つのリボン――1つの属性魔法のみを使用し、色はその属性によって変えるが、たまに2属性持つ魔獣もいるためそれを想定して2つ使用することもある――を騎士が解いたら討伐されたことになり、騎士の兜に取り付けられた魔道具――ハルトさんが昔魔法師の訓練のために作成した――を魔獣役が5回魔法で当て断末魔のような音が鳴ると脱落するルールだ。もちろん各々のスキルは使用して良いし、魔法も使える騎士がいれば魔法の使用も許可している。


「わかった。はは、リュトヴィッツ卿と戦えるのか。総長と互角の力量、見させてもらうぞ」


「俺はスキルなど持たないのだ。お手柔らかに頼む」


ハルトさんの眉がピクリと動いた。


「……これは本気でやらないとアレかもな……ディアナ嬢、やるぞ」


「え、本気で? 私の場合どこまで?」


「3属性それぞれの中級上級魔法だ。超級魔法は……あれは人にやって良い魔法じゃないからナシな」


私は苦笑いを浮かべて頷いた。


そして私たち3人と準備が整った騎士6人は少し離れたところにある魔法訓練場まで移動し、日が暮れるまで魔獣討伐ごっこを行った。


途中、魔獣討伐ごっこをやっているのを聞きつけたのか執務をしていたレイヴン団長とハインも参戦してきたり、器械鍛錬部屋にいた騎士や、宿舎にいた騎士たちも参戦してきたのでいつの間にか騎士が6人から20人にまで増えた。だから騎士6人ずつの4交代――ノヴァ様は4回連続で参戦することになった――で行うことになり、私はというと毎回MPポーションで魔力を回復させながら戦ったので結構鬼畜なごっこ遊びだった。


けれど、あんなに激しく魔法を使ったのは久々でかなり楽しかった。


ハルトさんも騎士相手にやるのは久々だったようですごく楽しそうに魔法を捌いていた。だけど、ノヴァ様は私のリボンを狙うことなくずっとハルトさんを集中攻撃していたため、ハルトさんはノヴァ様の兜の魔道具を当てようと上級魔法を繰り出しまくったりしてお互い思う存分やり合っていて、時折私はハインたち騎士から逃げながらそれをとても羨ましく見ていた。

次回は4/14(火)に投稿致します。

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