200.転移の魔道具の完成披露
遅くなりすみませんm(;∇;)m
「もうこの話は終わりで良いよな? 完成した転移の魔道具を見せたくてウズウズしているんだが」
ハルトさんが気持ちを切り替えるように言う。私も早く完成品を見たかったので賛成だ。
「転移の魔道具……」
「? どうしました?」
ノヴァ様のムスッとしたような顔が珍しい。近頃色んな表情を出すようになってきたように思う。それがなんだかとても嬉しく感じた。
「いや……それより、もう防音の魔法を解除しても良いのではないか? 魔力を削るだろう?」
「そうですね。転移の魔道具は公に発表するので秘密ではないですし」
私は防音の魔法を解除した。ここにいる3人の間でしか会話が聞こえないという高度な設定なので魔力消費が2万と、意外と魔力を削る。結界と同じっていうね。
「ここに出しても良いんだが、家具をどかさないとぶつかってしまうな」
設計図を想像すると、確かにここじゃ少し狭いかもしれない。
「では裏庭に行きましょう」
そう言って立ち上がり、応接室の扉へ向かう。ノヴァ様は自身の深紅の瞳を再び瑠璃紺に変えた。
「魔道具は装飾品のような身に着ける類のものじゃないのか?」
「いえ、一度に複数人転移できるものなので設置型です。なので結構大きいですよ」
「そうなのか……」
後ろから付いてくるノヴァ様を振り返ると、心なしか顔に安堵の色が浮かんでいた。
まさかノヴァ様、自分以外の誰かが私が作った転移魔法が付与されたものを身に着けられるのが嫌だとか思ったり……? いやいや、まさかね。私の願望にすぎないわ。
でもやっぱりちょっと気になったので、玄関と反対側の裏庭に出る扉へ向かいながら、私は勇気を出して尋ねた。
「さっきのって、ヤキモチ、ですか……?」
「ヤキモチ?」
「っ、い、いえ、何でもありません」
「嫉妬のことだぞ」
やっぱ違ったと恥ずかしくなってやめたのに、ハルトさんが続けてしまった。
「嫉妬……悋気のことか……確かに、悋気を抱いたのかもしれない。俺のブローチと同じようなものを他人も身に着けるようになるのかと思うと……」
口角がきゅっとなるのを抑える。ノヴァ様の独占欲みたいなものを感じると、たまらない気持ちになる。
「え、そのブローチ、転移魔法が付与されているのか!? うわ羨ましい……」
「ハルトなら……いや……」
ノヴァ様が葛藤している様子を見て、ハルトさんが「無理するな。いずれ魔塔にも設置する予定だから」と笑いながら言った。
裏庭に出ると騎士団の演習場がある。ちらほらと数人が鍛錬をしている姿が遠目に見える。
演習場の手前に芝の場所があるので、そこに魔道具を設置しようとハルトさんがローブの内側のポケットから収納袋を取り出した。
そして袋を地面に置くと、置いたまま中に手を入れ引っ張った。すると、大型の魔道具が地面の上にひゅっと現れた。直径5mはある大きな円形の魔道具だ。
「ほう、これは見事だな」
円のど真ん中に人の腰の高さ程の白銀の円柱があり、頂点に丸形のドラゴンの魔石が白銀の台座に埋め込まれている。そして円線上に5つのAランクの魔石が五芒星のそれぞれの頂点の位置に置かれている。土台は人が複数乗っても、いくらでも物を乗せても壊れないようにミスリルで作られていて白銀色に輝いている。
「ふ、まるで満月と星のようだ……ディアナらしいな」
丸形の魔石を満月に見立てノヴァ様がそう感想を漏らす。実際に魔石に魔力を注ぐと金色に光る仕組みにしてあるから本当に満月みたいになるんだけどね。
ハルトさんが自信たっぷりに言う。
「いや、この五芒星は俺の案だ。陰陽師っぽくてカッコイイだろ? この世界の魔法属性は4つだから全く無関係だけどな、はははは」
色々案を言い合っている時にハルトさんがこれを絶対やりたいとゴリ押ししてきたのが五芒星だ。異世界ファンタジー系には疎いのにオカルトとか陰陽師とか都市伝説とかそういうのは好きらしい。謎すぎる。
「オンミョウジとは何かはわからぬが、良い案だ」
「だろう?」
ノヴァ様は月と星がセットになっていることに、月の神と星の眷属神みたいだと思ったに違いない。
「ねぇ、一度これで転移してみたいんだけど良いかしら?」
「もちろん。ディアナ嬢も試さないと作った当人が知らないんじゃ疑われるしな」
ハルトさんはキョロキョロと辺りを見回した。そして騎士団の演習場の方を指さす。
「あの建物の1階は?」
「騎士団の器械鍛錬部屋ね」
いわゆるジムだ。ウエイトマシンやダンベルとかバーベルとかの器具が置いてある。
「よし、じゃああそこに転移しよう。できたらこの通信の魔道具で知らせてくれ」
ハルトさんが私に白い魔石が付いたピアスを渡した。
「ブレスレットじゃないの?」
「これは改良版だ。転移の魔道具と同時にこれも発表するつもりだ。王族と各省庁、それから軍の報告や連絡が主だから一般に渡るのはだいぶ先だがな」
5cm程の長めのミスリル製のチェーンで白色のひし形の魔石を繋いでいるので、通信があることを耳で気付けるのと、口元にも近いのでそのまま話すことができるようだ。
私は既に両耳にスキル無効のピアスが付いているため、改良版は手に持ったままにした。
「改良したが、通信の魔法陣もディアナ嬢が考案したからこれも共作扱いだからな」
「わかったわ。使いやすくしてくれてありがとう」
「あと将来的に各家庭に一つは持てるように固定電話を普及していきたいと思っているから、その時になったらまた協力を頼む」
「もちろんよ。じゃあ転移したらこれで知らせるわね。でもいきなり私が現れたら騎士たちがびっくりしないかしら」
「びっくりするとは思うが、それはそれで面白いだろ?」
「……」
私はいきなり私が登場した瞬間の騎士たちの顔を想像して苦笑いを浮かべた。
次回は4/9(木)に投稿致します。




