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194.お兄様の婚約パーティー(12)

皆の視線の先を辿ると、ノヴァ様に対し固定されているのがわかった。


だよね、こんな只人じゃないオーラを醸し出している超絶美形を目の当たりにしたらそりゃ固まるわよね。普段は極力抑えているけれど、元々ノヴァ様の気配は畏怖のようなものを感じさせるからそれに気圧されたのかもしれない。


ノヴァ様の神力は結界で封じているから魔力感知のできる殿下とアンリがいても何も感じ取るることはできないから、神様だとバレたわけじゃない。


「殿下、いかがなされました?」


「……ん? ああ、すまない……貴殿がリュトヴィッツ伯爵か?」


「はい。お目にかかれて光栄に存じます、王太子殿下。ノヴァ・リュトヴィッツと申します」


ノヴァ様は殿下に物怖じせず丁寧な所作で自己紹介をした。貴族の作法も学んだばかりとは思えない程板について自分のものとし、長身で超絶美形とも相まって気品と魅力に溢れ老若男女を視界の暴力で倒す勢いだ。


「ヴェルソー小公爵の他にも黒髪がいたとは。黒竜が消えてから近頃髪を黒に染める擁護派が何人かいるが、貴殿から魔法薬の独特な香りがしないから染めているわけではないようだな」


え、擁護派の人にわざわざ黒染めしている人がいるの? あれかしら、神聖視していた黒竜が消えてしまったからせめて黒竜の色である黒を身近に感じたいとか……? ハルトさんと真逆のことをするのね。


天界を追放されたせいで人間に「新月の神」の存在を忘れられたのに、なりたくてなっていたわけじゃない黒竜が一部の人間に崇められている状況は、ノヴァ様にはどう映っているのだろうか。


「貴殿の噂は王宮まで届いている。なんでもあのヴィエルジュ殿と同様に剣聖級の腕の持ち主だとか」


「恐縮です」


「貴族名鑑によれば属性は風と1つだけだったが本当か? 魔力量はどのくらいなのだ? スキルは……ああ、スキルは隠す者が多いから言いたくなければ言わなくて良い」


殿下はノヴァ様に興味津々なようで質問を重ねる。


新たに掲載された貴族名鑑のノヴァ様の欄には、ノヴァ様の属性は「風」としている。ノヴァ様は新月の神だから闇属性の持ち主だけど馬鹿正直に晒すわけにはいかない。風属性に決めたノヴァ様に理由を聞けば、攻撃以外では日常的にそこまで必要のない属性だから、らしい。火属性や水属性は確かに日常的に使う場面が多いから納得したけど、じゃあ土属性はと聞くと、土属性は大地や豊穣に関する魔法だから女性の印象が強いということだった。


殿下は魔力量を聞いてきたけど、今は私の結界で神力を封じているから魔法は使えない状態だ。スキルは明記していない貴族が多いため載せていないけど、実際のところノヴァ様はスキルを持っているのか今まで聞いたことがないのでわからなかった。


「属性は風1つです。ただ、魔力がほとんどないため魔法を使えません。スキルもありませんのでご勘弁を」


殿下が意外に思ったのか目を丸くした。


「……そうか、それは失礼した……闘技大会で優勝したあのノアが貴殿と手合わせをして惨敗したと聞いたのだが、まさか純粋な剣の腕だけで負かしたとわかれば是非とも私とも相手をして欲しいものだ。どうだ、王太子だからと遠慮も忖度もいらない」


ノヴァ様は一拍置いた後「喜んでお受け致します」と了承した。殿下の紫の瞳は好奇に光り、「よろしく」と挑戦的な笑みを浮かべた。


「ところでそれは何だ? なんだか食欲をそそる香りがするが」


「豆腐のお味噌汁というものです。ディアナ様の知識をお借りして大豆という豆を開発したので、これはそのひと品です」


「ほう、大豆……聞いたことがないが、品種改良か?」


「はい」


殿下が私に意味深な目を向ける。


「なるほど、共同事業ということか」


「いえ、共同までとは。私は大豆の開発に一役買っただけです。ですが、ご覧の通り貴族の皆様に大変盛況でございまして、宜しければ殿下もお味見をどうぞ」


「ふむ、頂こう」


給仕がよそったお椀を殿下に渡し、スプーンも渡した。日本人みたいにお椀に口をつけて飲むものだと説明してもこの国ではマナー的にひっかかるからね。ハルトさんはお構いなしにお椀に口をつけて飲み干していたけど。


「良い香りだな」


殿下がスプーンですくって口に運ぶ。私はそれをドキドキしながら見守った。


そして嚥下の瞬間、殿下の顔色が変わった。


「……ほう、これは美味いな。不思議と落ち着いた心地になる」


驚いた顔でそう言うので途端に嬉しくなった私はノヴァ様と顔を見合わせ微笑んだ。


好評価頂きました! ふふ、これでこの国に和食が広がる! やっほーい!!


「……この白いのが豆腐というやつか?」


「ええ。筋肉に必要な栄養が豊富でして、我が家の騎士たちは大豆の料理を食べるようになってから筋肉が付きやすくなったといった声をたくさん頂きました」


お父様が朝食にお味噌汁を出すようにと言ってから、騎士団の宿舎の食堂や使用人の食堂でもお味噌汁などの大豆加工料理が出されるようになったのだ。もちろん私が我が家の料理人にレシピを伝授したわ。


「ほう、それは良いことを聞いた。リュシアン、お前も食べてみろ」


「ありがとうございます」


筋肉に良いと聞いた途端、近衛騎士のリュシアンが反応したのを殿下は見逃さなかったようだ。


「ディアナ、私もいただいても?」


「僕も欲しいな」


「もちろんです……アンリ様もよろしければ」


「……ああ、もらおう」


アンリの様子が少し変に感じた。どう変かというと、自分の中の葛藤と戦っているような、落ち着きがない感じだ。


リリアもアンリもリュシアンもルカも、そしてちゃっかりミヅキもそれぞれお味噌汁を飲み、ほっと一息つくような表情で殿下のように好評価をくれた。


殿下は王宮でもお味噌汁を飲めるようにしたいと言うので、ノヴァ様は商談のために後日王宮に招かれることとなった。殿下との手合わせも予定に入れられている気がするけど、大豆加工料理が王宮の食卓に並ぶようになる貴重な機会を得られたことに、私は内心でガッツポーズをした。

一部修正、追加を致しました。


次回は2/19(木)に投稿致します。




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