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193.お兄様の婚約パーティー(11)

紹介を受けたミヅキは丁寧にお辞儀をして初めましての挨拶をした。


アンリの横にいるルカがアンリとミヅキの様子を窺うようにヘーゼルの瞳を動かしている。そして一瞬私を流し見た。ルカは私と目が合って少し驚いたような目をしたと思ったら、何事もなかったかのように視線を外した。


ルカも私がミヅキを好きだと認識しているのだと悟った。お兄様から聞いたことだから、もしかしたら殿下の側近たちの間で共有されているのかもしれない。口からため息を吐き出したくなった。


その時、殿下がボソリと「ちょうど良いか」と呟いたのが聞こえた。


「ところでミヅキ殿も逆鱗を持っているのか?」


「……!」


殿下がさっきの話に戻してしっかり聞いてきた。


『……はい』


「いくつだ?」


『2つです』


今までに私が討伐したドラゴンは5体。火竜の逆鱗は剣に、水竜の逆鱗はマントに使い、風竜の逆鱗はディーノさんに譲った。あと残っているのは番のもう1体の水竜の逆鱗と土竜の逆鱗だ。


ミヅキは正直に応えるしかない。だって相手は王太子で、「ミヅキ」は庶民だから。


「ああ、そう警戒しなくても良い。ただ国家予算級の素材を2つも持っているとなると、ミヅキ殿の資産は高位貴族も馬鹿にならない程になると思ってな」


アンリの息を呑む音が聞こえた。そして何故か私に目を向けてきた。


『そ――』


「まぁ、それは凄いですね。ミヅキさんの努力の成果とそれに見合った報酬ですもの。まさか殿下、取り上げるつもりはありませんよね?」


2号が『それがどうした』と喧嘩腰で言うつもりだったので、すかさず間に入った私は殿下に理不尽なことを要求されないように先手を打った。


アンリからの視線がまだ刺さっている。


「まさか。欲しければ価値に見合った取引をする」


「それを聞いて安心致しました。良かったです、殿下が横暴な方ではなくて」


何を考えているのかわからない殿下に少し嫌味を含めて言う。こんな風に強気に出られるのは、お父様が領主貴族家の中で頭一つ抜けた存在に位置づけられたと殿下が言ったからだ。


「くく、面白いな。ミヅキ殿、良かったな、銀月姫に庇ってもらえて」


「私はミヅキさんのファンですから、庇うのは当然です」


「だが盗まれでもしたら厄介だ。管理に困れば王宮で預かることもできるが、どうだ?」


今まで討伐で採ってきた素材は全て収納魔法でしまっている。魔道具の収納袋じゃないから盗まれるなんてあり得ない。


『殿下のお気遣いに感謝致します。誰にも盗まれない場所に保管してありますが、困った時はよろしくお願い致します』


「だそうです、殿下。心配ご無用ですわ」


殿下が片眉を器用に上げた。


ミヅキ(2号)は恐縮してみせ、そしてアンリに目を向けた。アンリの視線が私からミヅキに移っていて、それは突き刺すような視線だった。2号はさらっと受け流していたけど、本体の私に流れてきた心情は好戦的だった。分身なのになんで性格が違うのよ。


アンリの勘違いをどう訂正すれば良いのかもわからない。下手に訂正して「じゃあ好きな人って誰だ」とこの人たちの前で言われたくなかったので、さっきは咄嗟にファン公言してしまった。


「ディアナ様、ご歓談中失礼致します」


声をかけてきたのは我が家の侍従だ。


「どうしたの?」


「リュトヴィッツ様がお呼びです。ヴェルソー公子様を止めて欲しいと」


ハルトさんを止めて欲しい? 何かあったのかしら。


「ありがとう、今行くわ」


侍従がお辞儀をして去っていった。


あ、そうだ、ノヴァ様のところに行くなら殿下たちも誘って大豆料理を食べてもらおうかしら。


「申し訳ありません、今――」


「リュトヴィッツってあの噂の御仁のことだな」


「え?」


「ディアナ嬢、良ければ紹介してくれないか?」


なんと殿下から申し出があるとは。王太子である殿下にノヴァ様のことを紹介できれば大豆事業が上手くいくきっかけにもなるわ。


「もちろんです」


私は笑みを返して殿下たちをノヴァ様のところへ案内した。


そしてノヴァ様がハルトさんを止めて欲しいと言付けた理由がわかった。


ハルトさんが何度もお味噌汁をおかわりしているせいで鍋の中にはもう半分以下の量しか残っていなかった。


「すまないディアナ。貴族と商談をしているうちに」


「ごめん、ディアナ嬢……」


ハルトさんがバツの悪そうな顔をする。


「大丈夫ですよ。追加分もちゃんと作ってありますから。ですが多くの方にお試し頂きたいのでハルト様はもう終わりにしてくださいね」


「おう……つか腹がタプタプする。さすがに飲みすぎた。美味しすぎて」


「ふふ、気に入っていただいてありがとうございます」


私はその辺にいた侍従に頼んで追加のお味噌汁の鍋を厨房から持ってこさせた。


ハルトさんはこれでも(失礼)ヴェルソー公爵子息。その彼が気に入ったのなら殿下の未知の料理を試すハードルが少しは下がるかもしれない。


その前に殿下にノヴァ様を紹介しなくちゃ。


後ろにいる殿下たちを振り向くと、なんと皆して(ミヅキ(2号)は除いて)宇宙人でも見てしまったかのように目を見開いて固まっていた。

次回は2/16(月)22時以降に投稿致します。

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