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192.お兄様の婚約パーティー(10)

「昨年の闘技大会を観戦しておりました。とても迫力があってそれはもう興奮しましたわ。あの魔法の天才であるヴェルソー小公爵に勝利するなんて、これまでたくさんの努力をしてきたのでしょうね」


『身に余るお言葉、痛み入ります』


ありきたりな褒め言葉を並べただけだけど、自分で自分を褒めるなんてむず痒いったらない。他人のフリの演技をするには仕方がないけど。


「だがここ最近活動していないという噂が王宮まできているが、何かあったのか?」


ギクッ……


しばらくディーノさんとギルマスに会わないようにしているから活動を控えているんだけど、そんな噂が王宮まで? あ、もしやギルマスがギルド統括官に何か言ったとか?


私は2号に視線を送った。


『そうですね……もうローレンの森にしか魔獣がいませんし、そこもいつ消えてしまうかわかりません。なので私が討伐をするより他の冒険者にやってもらった方が冒険者の生活のためには良いと思いまして活動を控えております』


「ふむ、他の冒険者に譲っているわけだな。それもそうか」


殿下が納得してくれたので、私は胸を撫で下ろした。


「そうだ、ディアナ嬢」


「何でしょう」


「先日陛下に土竜の逆鱗付きの剣を見せてもらったんだ。あれは素晴らしいな。剣身が透き通るような真鍮(しんちゅう)色に土竜の黄金の輝きが足され黄金に包まれていた。まさに王に相応しい剣だった」


「それはとても光栄です。お父様も喜びます」


お父様が採取した逆鱗とオリハルコンをダレン工房で錬成し完成した剣を陛下に献上したのだ。でもそれは立太子の儀の前のことだったはず。どうして今その話をするのだろう。


「知っているか? ドラゴンが消滅したことで逆鱗とオリハルコンがもう採取できなくなったことからそれらの価値が暴騰しているんだ。今や陛下の剣は国家予算に凌ぐ程の価値になっている」


さらに殿下はそれ程のものを陛下に献上した私のお父様を領主貴族の中でさらに飛び抜けた存在に位置づけられたと言ったため、私は驚きを隠せなかった。


だからさっき領主貴族の中の均衡がどうのって話をしたの?


リリアを窺い見れば、少し緊張した面持ちをしていた。王妃の座を私が揺るがすのではと思っているのかしら。でもそう誘導しているのは目の前にいる殿下だ。


あれ、でも待って。陛下の剣の価値が国家予算級なら、ミヅキが持っている剣とマントの価値も国家予算級だということよね……あ、ディーノさんの剣もそうだ。


私は至急ミヅキ(2号)に念話を繋いだ。


〈ねぇ、殿下に見せたりしてないよね?〉


〈〈してないし言われてもいない。剣は収納魔法でしまってあるし、以前ローレンの森で鉢合わせた時は逆鱗の剣じゃなかったから持っていることを知らないと思う。マントもその道の職人でないと逆鱗を使っているかそうでないか見ただけでは区別がつかない〉〉


分身に変身魔法をかけたからか念話の声と口調まで男のミヅキだ。


〈そうだけど、「竜を屠る者」の称号を持っていたらミヅキも逆鱗を採っているって思われてないかしら〉


〈〈なに、持ってたら譲れって言われるかもって?〉〉


〈国家予算級のものをタダで譲れとはさすがに言われないとは思うけど……〉


逆鱗を売れば高位貴族並みかそれ以上の資産を築ける。庶民である冒険者が貴族を凌ぐ資産を持つのを殿下は良しとするのかどうか。


「何の話をしているんだ?」


っ、アンリ……!


2号との念話に気を取られ、声をかけられるまで気づかなかったためいきなりのアンリの登場に驚いてしまった。


アンリに会うのは告白以来なので、途端に緊張してしまう。しかもアンリだけじゃなく、宰相の息子のルカ・エスコルピオまでいた。


「ドラゴンの逆鱗についてだ」


「逆鱗? 価値が暴騰しているあれ?」


ルカが問うと殿下は首肯した。


「確かヴィエルジュ様が採ってきた逆鱗は陛下に献上したもの以外だと風竜と火竜の2つだったよね。オリハルコンはまだストックがあるから逆鱗程高騰していないけど、宝物庫の管理とかより厳重になったって父上から聞いたよ」


「じゃあ今後は王位を継ぐ者だけになりそうだな、逆鱗とオリハルコンの剣を所持できるのは」


アンリは殿下を流し見た。


「黒竜もドラゴンも消滅し、今や魔獣はローレンの森のみ。皇国とは膠着状態ではあるが、宝の持ち腐れになるだろうな」


王者の剣の出番はないだろうと、殿下は肩をすくめた。その仕草には自虐が垣間見えた。


アンリがミヅキに視線を移す。青藤の瞳に一瞬鋭い光がよぎった。


「……まさか本当に呼ぶとは」


「ふ、なんだ、アンリ。見たくないと言っていたが、やはり気になるのか?」


アンリはそっぽを向いた。それを見た殿下の口角が少し上がる。


「ミヅキ殿、紹介する。私の側近でリリアの兄であるベリエ公爵家のアンリだ」


「……よろしく」


紹介されたアンリは向こうを向いていた顔を元に戻し、値踏みするようにミヅキの全身を眺めた。ミヅキを敵視するような雰囲気を醸し出しているので、なんだかいつものアンリらしくないと思った。


ふと違和感を覚えた。


アンリの魔力、少し変わった? ちょっと歪な感じがするような……でも魔力が変質するなんてこと、瘴気を長時間浴びでもしないと起きないよね……ローレンの森で長い時間魔獣の討伐でもしていたのかな。

次回は2/12(木)に投稿致します。

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