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幕間(27)

「報告とはなんだ」


2人になった執務室でジュードが促す。


「ランデル山脈の向こう側のことだ」


滅多に顔色が変わらないジュードの表情が険しくなった。


「天界の掟もあって言えずにいたが、ジュードとディアナには恩がある。それに俺は今は神ではなく人間としてここにいる。だから伝えておく」


「……」


「エルヴァーナに、ドラゴンがいる」


「……!」


ジュードの暁の瞳が驚愕に揺れ動く。ここまでの大きな反応は初めて見た。


「確かなのか?」


「ああ。頂上からエルヴァーナ側に降りた時に発見した。しかもどうやら皇国の人間はドラゴンが山にいることに気づいていないようだった。おそらく吹雪と雪深い山のせいだと思うが、雪解けにはドラゴンも活動をし始めるだろう」


ジュードが顎に手を添えた。


「なるほど。エルヴァーナに潜入してるはずの王家の影からそれについての情報がないのもそのせいか。情報があれば陛下から私の耳に入るはずだからな」


顔を上げ、眉根を寄せて私を見る。


「それで、貴方は何故あちら側に?」


「……神殿での魔力登録の際に出た俺のステータスに、創造神オルベリアンからの伝言があったのだ。『北の国に気をつけろ』と。だから様子を見に行った。まさかドラゴンがいるとは思わなかったが」


「やはり浄化から逃げていたのか」


「何体かは浄化されたが一部は浄化から逃げようと、エルヴァーナにある瘴気に気づき山を越えたんだろう。確かにエルヴァーナから微かに瘴気を感じたからな。あいつらは瘴気を好む」


ジュードは嘆息した。


「ただオルベリアンが警告してきたのはラヴァナが浄化される前のことだ。その頃はまだドラゴンはルナヴィアにいたから、オルベリアンが警告してきたのはドラゴンではなくおそらくエルヴァーナに瘴気ができたことだろう。俺は一度もあちら側には踏み入れていないのだがな」


「……」


ジュードは前屈みになり、少し声を落とした。


「エルヴァーナで瘴気が発生しているのは、瘴気の石によるものだ」


「……瘴気の石、だと?」


俺はジュードを見据えた。


「ああ。公にしていないが、貴方には伝えておこう。シュタインボック公爵が公爵領で採れた瘴気の石を『月の石』と称して皇国に流している。昨年のウィルゴの月あたりからだ。そのせいで今皇国は皇族と貴族の間で瘴気による精神病が蔓延している。治療薬がないため国内に広がるのも時間の問題だろう」


俺は瘴気の石のことを「月の石」と名付けていることに腸が煮えくり返りそうになった。俺がルナヴィアで瘴気を発生させた原因なのは確かだが、同じ月の神である姉上までをも侮辱しているように思えたからだ。


「……ノアの婚約披露パーティーには元凶である公爵も出席するが、本人を前にそのような目を向けないように気をつけてほしい。秘密裏に公爵を追い詰める準備を進めているため、悟られたくない」


「……」


俺ははっとし、怒りを鎮めるため目を伏せた。


「ところで、昨年の秋頃から皇国に瘴気が広がり始めたのにドラゴンがあちら側に行っていないのは、貴方がルナヴィアにいたからか?」


「ああ……黒竜をドラゴンの王とでも思っていたようだ。結界で俺の神力が漏れないようにしていても、瘴気の根源であることに違いないからな」


少々自虐的な言い方になってしまった。表向き人間として生活するようになって数ヶ月。まだ俺は変われていないようだった。


ジュードはどうするつもりだろうか。思考が表情に出にくいため読めない。


「要請があれば助けるのか?」


「いや……皇国の度重なる侵略で既に国交はないためこちらが何かをするということはないだろう。陛下もそのつもりだ」


「そうか」


それを聞いて安心した。


ドラゴンを単独で討伐できるのは目の前のこの男とディアナくらいだ。そして瘴気による精神病に侵されている者を救えるのはディアナただ一人。


ディアナがこのことを知ればお人好しなところがあるディアナのことだ、救いたいと皇国に乗り出す可能性がなくはない。


俺の懸念をジュードもわかっているのか、「ディアナには何も教えないように」と言われた。無論そのつもりだ。


「それと、皇国の間者をヘレネの森で捕らえた」


俺は眉を寄せた。


「尋問すると、瘴気の石――間者は『月の石』と言っていたが、その出処を探っていたようだ。公爵に繋がる証拠は何も持っていなかったがな」


「尋問が甘いのではないのか?」


ジュードの暁色の視線が俺に向く。


「……ここだけの話だが、私の影には特殊なスキルを持つものしかいない。当然それを駆使して尋問をしている。それでも収穫がないのであればそれまでだ」


「……なるほど」


「だが捕らえた時がディアナがヘレネを浄化していた時だった」


「……! まさかディアナが間者と遭遇したのか?」


ジュードが(かぶり)を振った。


「あの時、ディアナが付けていた魔力隠蔽の魔石が許容を越えたため割れてしまったのだ。そのため浄化の魔力が隠せなくなった瞬間があった」


「何……?」


それは初耳だった。ディアナから何も聞いていない。


「一時的に『ディアナ』の魔力が顕現された。だが魔力感知できる者はディアナではなく『ミヅキ』の魔力だと感知したため、あの浄化が直接『ディアナ』に繋がるものではないと現状なっている」


「……感知した者がいるのか。誰だ」


「Sランク剣士のディーノだ」


ディーノ? 知らないな。


「それと捕らえた間者もそうだ。その間者が浄化の魔力が『ミヅキ』の魔力だと知ってはなかったが、何者かが魔獣を消すことができる力を持つことは知られたため記憶操作を施してから王宮に引き渡した」


それならディアナに害が及ぶことはないだろうが……


「他にも間者が潜んでいれば、ローレンの浄化どころではないな」


「今影たちが皇国の間者の炙り出しをしている。浄化はそれが終わり次第だ」


「……そうか」


俺が生み出した魔獣を消滅させてくれるのはディアナだけだ。神力を使ってはいけない俺は実際何もできない。だがせめてディアナが安全に魔獣の浄化を成し遂げられるようディアナを守りたいと思った。

次回は1/2(金)に投稿致します。


皆様、今年もお付き合い頂きありがとうございました。

来年もどうぞよろしくお願い致します。


では、良いお年をお迎えください(^^)

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