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182.お兄様にバレたようですpart2

メリークリスマス!

「……どういうことでしょうか」


頭の良いお兄様でも、黒竜を目の前の人物に結びつけるには至難の業のようだった。ノヴァ様が「リュトヴィッツ伯爵」だと認識しているなら尚更。


「黒竜が月の女神の弟神であることは覚えているか?」


「はい……まさか」


お兄様がノヴァ様に目を向けた。


「俺がその弟だ」


お兄様の翡翠の瞳が収縮した。驚くのも当然だ。


ノヴァ様が事情を話し始めた。


「人間は忘れてしまっているが俺は新月を司る神で、満月を司る女神ルナとは表裏一体の神だ。だが800年前に人間界に追放されディアナに浄化されるまでは黒竜として山脈で過ごしていた。浄化されてからはジュード殿にエルガファルの地を任され、リュトヴィッツ家の中継ぎ当主をやっている」


お兄様は翡翠の目を見開いたまま「新月の、神……?」と呆然と呟いてノヴァ様を見ている。そして次第に困惑の表情を浮かべた。


「いや、あの……新月の神がいたことも驚きですが、その神である貴方が何故中継ぎの当主なんてやっているのですか?」


尤もな疑問にノヴァ様は人間界に追放されてから自身の身に起こったことをお兄様にかいつまんで説明した。


説明の途中でお兄様も何故人間界に追放されたのかを聞いてきた。でもノヴァ様は天界で罪を犯したからだと伝えはしたけど、私とお父様と同じ様にお兄様も「何の罪か」を尋ねてもノヴァ様は応えることはなかった。


私の浄化によってノヴァ様は元の姿に戻ることができたけど、シュタインボック公爵の件で今まで通りこのまま山脈に居続けるのは危険なため、ノヴァ様をうちに住まわせるために貴族の養子になってもらったことを私の口から説明した。


「ディアナは毎回予想外のことをしてくるね」


お兄様は半ば呆れ半ば感心したように感想を漏らすと、お父様に意味深な視線を投げた。何かしら。


「……変に解釈させたくなかった」


「……なるほど。でも噂の御仁がまさかの神様だったとは……ふふ、皆が知ったら卒倒どころの騒ぎじゃないですね。まぁでも、『新月の神』が天界から追放されたことで人間に存在を忘れられたのなら、言ったところで誰も信じないだろうけど」


「お兄様」


ムッとして、強い口調になってしまった。


「わかっているよ。誰にも言うわけないでしょ。あ、僕、貴殿に手合わせをお願いしましたけど冗談ではないですからね? 父上のように手加減はなしでお願いします」


「ああ、承知した」


お兄様は秘密を守ってくれるのはわかっている。そこは疑っていない。それでもお兄様に憤りを感じたのは、ノヴァ様が人間に忘れられた存在だから誰も信じないと言われたから。この国は月の女神信仰が強いというのに。なんだかそれがとても悔しかった。


でもノヴァ様とお兄様の雰囲気が和やかなのはちょっと安心した。ノヴァ様が人間界に来たことがきっかけで瘴気が生まれ魔獣が誕生してしまったから、それを聞いたお兄様はノヴァ様に対してマイナスイメージを持たないか心配だったけど、杞憂だった。天界の神でさえこうなると予想できなかったのに誰がノヴァ様を責められるというのか。お兄様もわかっていてくれていたようで、そこは嬉しかった。


その後は解散となり、私とお兄様は執務室を出た。ノヴァ様はお父様に報告があるらしく、そのまま部屋に残った。


就寝の準備のためお兄様と3階に上がる途中で、「ディアナはあの方が好きなの?」と突然聞いてきたので階段を踏み外してしまった。


「大丈夫?」


「……はい」


今まで鍛えてきた身体能力のおかげで踏み外しても着地に問題はない。


「図星ってことで良いかな?」


「……はい」


動揺で階段を踏み外した恥ずかしさと好きな人を言い当てられたことで顔が熱くてお兄様を見れない。


「どうしてわかったのですか」


「うーん、ディアナの彼を見る目かな。やっぱり目は口ほどにものを言うね」


「……私、そんなあからさまでした?」


本人に悟られないように気をつけているのに。


「いや? たぶん身内じゃないとわからないくらいの極わずかな変化だよ」


それを聞いてほっとした。


「でもたぶん……いや、いいや」


「?」


「僕が気になるのは、天界で犯した罪とは何かってことなんだけど……追放されたってことは余程の罪だよね」


「それは……」


ノヴァ様はその部分だけは頑なに話そうとしない。だから私も気になっている。


「……前にノヴァ様がこぼしたことからの想像ですけど、ノヴァ様自ら罪を犯した感じではないと思います。天界で何か良からぬことが起きて、それを防ぐために行動したことが結界的に罪になったようで……」


「ふぅん。とばっちりみたいなものかな。まぁ確かに罪を犯すような人には見えないしね。でも良いの?」


「何がですか?」


「婿養子のこと。あの人は候補じゃないでしょう。割り切れる?」


階段を上がりきったところで立ち止まる。


「……リュトヴィッツ家を盛り上げれば、ノヴァ様のあの条件は帳消しにできると思いますか?」


あの条件とは、「結婚しない」ということだ。


私の鋭い視線にお兄様は何かピンと来たようで「ああ、だから枠をお願いしてきたの?」と笑い混じりに言った。


「自分勝手なのはわかっています。相手が相手なので望みが叶うのも低いことも。でも……」


お兄様が、ふ、と柔らかく笑った。


「良いんじゃない? なんか面白そうだし」


「面白そうって……」


妹の恋なんだからもう少し真面目に応援して欲しいんだけどな。


再びムッとして2人廊下を歩いていると、お兄様がさらに笑った。


「ごめんごめん。でもいつものように思うようにやったら良いよ。僕も協力できることは協力するし」


ノヴァ様に恋をするって恋愛初心者の私にはSランク級の難易度だから、婚約者がいてもモテ街道を突っ走っているお兄様が応援してくれるなら、色々相談もしやすい。


私は小さくはにかんで「ありがとうございます」と言った。


「あ、ちなみにアンリってディアナの好きな相手知っているの?」


「いえ、何も言ってません……好きな人がいるとは言いましたけど」


お兄様が苦笑いを浮かべた。何を言いたいのかはだいたいわかった。


「い、言った方が、アンリが前に進むためには良いかと思って……自己満ですかね」


「いや、それですっきり諦められれば良いけど、なにせ想いの長さがなぁ……」


「時間がかかるとは言われました。諦めきれるまで想っていて良いかとも」


そう言われた時のアンリの心痛な様子が思い浮かんだ。


お兄様が立ち止まる。気づくと私の部屋の扉の前で、お兄様の部屋は通り過ぎていた。


「そう……じゃあ今こそ言うよ。ディアナは自分の気持ちを優先してね。中途半端な気遣いは優しさじゃないからね」


それぞれ誰に対して言っているのか恋愛初心者の私でもわかった。


「はい。ありがとうございます」


やっぱりお兄様は心強いなと思った。

次回は12/29(月)に投稿致します。

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