21話 女と無能大佐と長たらしい因縁の末
全方位から発砲された小さき銃弾。
だがユロは案ずることなく片手を天に掲げる。
『さっきも見せたはずなんだが?』
磁力。
単なる鉛玉ごとき、いくら数があっっても弾き飛ばせる。
[―じゃあ、返そう]
『あ?』
[一度見たものを、忘れて特攻するバカがどこにいる?]
そう、本来なら磁力で弾き返せたはずの何百発の鉛玉は、驚くことに磁力に反発することはなかったのだ。
無数の弾丸は、磁力の防御を抜け、ユロに体に突き刺さる。
非常に極小な弾丸だが、多数命中するなら話が違う。
『なっ………にぃ…』
[磁力を無効化できる加工を施した弾丸だ。ちょっとは威力は落ちるがな、機械を壊すのには関係ないだろ?]
「ユロっ!」
ジジッと、明らかに鳴ってはいけない音を身体からあげ、ユロは膝をつく。
用済みと見たドローンは、銃口を珠子に向ける。
[ルイ、お前もこうしてやるよ]
「アンタ……いつもは前に出て戦うくせに、卑怯な…!」
[別にいいだろ、そんなこと。確実に仕留められる方がいいし]
気だるさを見せながらも、ドローンからは無数の銃弾。
当然避けられる超人でもないために、珠子はもろにくらう。
「くっ………うぅ…」
[いいか、以前は剣の俺と水系のお前とじゃあ埒があかなかったがな、今は違う。俺は最強の端末をこの手に収めたんだ]
「だからなんなのよ、卑怯者っ!」
[あー、うるさいうるさい。とっとと消えろ]
先ほどよりも倍の数の銃弾が珠子に襲いかかる。
先のようにはいかぬまいと、氷壁の展開の構えをしれっとしていた珠子は防御に成功する。
[………ん、防いだか]
「二度もくらいたくもないわよ、そんな卑怯者の銃弾なんてね。あと今の間はなに」
[……いや、特に関係はない。―あまりHIRIは使いたくないが………ならこれだ]
オリバがトランシーバー越しで指を鳴らすと、さらに倍の数のドローンが集結。
そして一斉に射撃が行われた。
「……へー、バカね、二度もって言ったでしょ? なら当然の如く当たらないに決まってるのよ」
しかし今度は突如として現れたツララによって全て防がれる。
[っ……。やはりやるな、ルイ]
額から流れる血を右手で押さえつつ、因縁の宿敵に賛辞を贈るオリバ。
忘れている方もいるだろうが、オリバの使う端末「HIRI」には、「使えば使うほどに使用者の体に負荷がかかり出血する」というデメリットが存在する。
そしてこれは新たに開示されるデメリットでもあるが、出血量は使うごとに少しずつ倍になっていくのだ。
そのデメリット故に、あまりポンポン使える代物ではない。
「オリバ、あんたまさか出血でもした?」
[な、何を言う。んなわけないだろうがよ……]
「ふーん……。ならいいけど」
トランシーバー越しのオリバの反応から何か察した珠子は、とある賭けに出た。
「ほら、チャンスよ」
四方をドローンが囲んでいるのにも関わらず、両手を上にし、無防備になったのだ。
[っ!? テメェ、ルイ、何のつもりだ!]
「アンタ、そのドローン使うノーリスクだって言うじゃない。確かめたいから撃ってみなさい。もう一度アンタの反応見してもらうから」
[ぐっ……]
オリバは拠点にて唇を噛み締め、非常に迷っていた。
今撃てばおそらくだが因縁のルイを仕留められる。だが、彼女は自身のデメリットの存在に薄々気づいているがためにこんな行動をしているのだから、彼女が潔く弾を受けるとは限らない。いやそもそも気づいてなくとも防ぐのかもしれない。
しかしまたとないチャンス。見逃すなんてマネは三流、いや四流だと自信に言い聞かせ、オリバは手元のレバを傾けてドローンの銃身を操作し、ボタンを押して弾を発砲した。
[(賭けるしかない、アイツが防がないことに! 防いだとしても、デメリットの存在がバレたとしても! 別にただ貧血で倒れるだけ、死ぬわけじゃない!)]
別に対面しているわけではない。だから死ぬわけではないのだ。だから多少の無理は許容範囲。だったら攻めまくるのが吉だ。
[(いける、勝てる! アイツの持った疑心のおかげでっ! ―アイツがバカで)]
「―助かった。とでも思ってるでしょうね」
[なっ……。なんで読まれた……?]
あっさりと能力で防いだ珠子は、呆れる顔でこう言う。
「アンタの出血作用ぐらい、調べるまでもなくわかってた。それにもう一つの弱点も」
すると珠子は氷を生成しだし、何かを作り上げる。
「アンタには見えないかもだけど、今私はスピーカーとマイクを作った。仲間のぬいぐるみのおかげで電気は使えるしね」
[見えないだって………? ば、バカ言えそんなこと分かるはずがっ!?]
珠子は付け足すように、マイクをドローンに向け、言った。
「アンタのドローンは、声だけで私を認識してるのよ。だったらスピーカーなんて使ったらどこに私がいるかは分からないわよね?」
そう。オリバの使用するドローンには、カメラ機能はなく、対象の声によって、その対象の大まかな位置を特定しているのだ。
[ちぃっ! だからなんだ、当たりさえすればいいっ!]
闇雲に乱射をするも、手応えはない。むしろ、額から出る血は多くなるばかりで、オリバは少しよろめきながらも無力さを感じる。
一方の珠子はと言うと。
氷製のマイクに適当な叫び声をし、スピーカーから発せられる爆音の叫び声を利用し、次々にドローンを処理していく。
『よくわかったな』
負った体を押さえつつ、倒れた体をユロは起こす。
「自称最高戦力の一角さんがそんな簡単にやられるわけないでしょうに……」
『すまんな、強いことと体の強度の話は関係なくてな』
「まあ、それより今は。オリバの野郎の居場所を突き止めないとね。……検討はつかないけど」
前髪を弄りながら困ったような素振りを見せる珠子をよそに、ユロはまだそこらを彷徨うドローンに手を向ける。
『―通信』
ユロが唱えると同時。ガタッとドローンが制御を失い、地面に転がる。
「ユロ、アンタ今何したわけ?」
『通信。機械に介入し操作したりできる』
「なんでもありね、アンタの能力……」
『そして当然機械に介入するわけだから―』
ユロはニッと口角を上げると。
『―逆探知なんかもできる』
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オリバは頭を抱えるほどに困難に直面していた。
そもそも、この作戦におけるオリバはサポート役に徹していた。
オリバの完璧なサポートと、浩介の突破力でロンリー軍を一掃するつもりだった。
だが、肝心の浩介は裏切り、ロンリー軍でもない第三勢力を名乗っている。
浩介がコチラから消えたとなれば、援軍なき今、現状の最高戦力であるオリバが出なければ、小白戦線は終わる。
しかし、彼らのいる場所からはかなり遠く離れているがために、仕方なくドローンの数少ない攻撃手段を用いて戦うことにしたのに。結局はそれすらも実質的に封じられ、もはや戦況は絶望的。あちらこちらの電話が鳴り響く始末だ。
「……くそ。くそッッッッ!!」
なにもかも上手くいかず、イラつきをぶつけるために机を叩くも、出るのは大きくも現実を見せるだけの音。
だが、ここで諦めるなんてことはできないのだ。
これは王が自分に命じた重大な任務。
昇格もあり得る、自分にとっても、王にとっても、そして国にとっても大事な任務。
それを捨てるなど死に値する。
「……別にまだ居場所がバレたわけじゃない。だったら剣持って、俺が直々に前線に行けばいい。到着するのが遅いにしても、勝てないにしても、戦況はある程度保たれるし、援軍が来るまでの辛抱だしな」
オリバは自身の愛剣を探しながら受話器を取り、慣れた手つきで固定のダイヤルを入力し、とある人物に電話をかけた。
[―どうしたオリバよ]
「ルピー王、色々と話したいことが山々ですが……まず、浩介が裏切りました」
[……そうか。ならば浩介には然るべき罰を与えないとな]
「それもそうなのですが……浩介がいなくなった分の戦力を補うため、援軍の要請をしたいのが現状でして…」
[………わかった、ならば我直属部隊の一部に値する、約1500人をそちらに向かわせる。その間、何としてでも戦線を死守するのだ]
「了解致しました」
ブツっと電話の回線が切れ、久しぶりの王との会話が終わりオリバは安堵する。
探していた愛剣も見つかり、援軍の手配も済んだ。
―スムーズに行けて約4時間。これはスワーム大共和国首都、虹来から、ここ、小白までの馬車を用いての移動時間だ。
実際はもう少しかかると思われるが、どちらにしろ、この長時間の間、オリバと少しの護衛でこの拠点を守りきらなければならない。
しかしオリバには自信があった。
「(そもそもアイツらがここを知っているわけない………! 仮に浩介を通してここを知って来れたとしても、自分の強さには自信がある。だからここを守りきれる!)」
忘れがちだがオリバは、以前浩介と彼の相棒であるドルと共闘し倒したゴビ将軍との戦いにて、一時的にだが実力でゴビ将軍を圧倒していた強者だ。倒すは無理だが引き留めるなら容易いだろう。
そしてなによりも珠子やユロが、オリバのいる拠点の場所を知るはずがないのだ。
「たしかに負かされはしたが、最後に勝てればいい。このオリバ大佐を侮られては困るんだよ。せいぜい俺の手のひらの上で躍っていやがれ」
少し調子に乗りつつも、オリバは鞘に入った愛剣をベルトに携えて外に出る。
「第三勢力だの、宣戦布告だの、少数が国に勝るわけでもなかろうに……本当バカで醜いな―」
「それ、誰のこと言ってるわけ?」
「……は?」
あまりに唐突なことだったがために、数秒時が止まったかのように静止したあと、自身に向け飛ばされた氷の礫を間一髪で躱し、距離を取る。
「な、なんでここにいる…ルイっ!?」
「なんでも何も」
『逆探知しただけだ』
「は………まさか、ドローンを使って俺の位置を炙り出したのか? んなバカな!」
「嘘だと思っても現に私たちはここにいるのよ。でだけど、オリバ、アンタを拘束するわ」
「拘束? 何言ってんだか、俺とお前とじゃあ実力は五分五分だぞされてたまるかよ」
「私だけじゃない、ユロもいる。今までのタイマンじゃないのよ。オリバ。アンタは私たちには勝てない」
「…………勝てない、だぁ………?」
断言されたことに腹を立てたのか、オリバは鞘に入った剣の柄部分を軽く握り、片膝を下ろし、もう片方の膝を後ろに下げる。
「そんな簡単に言われちゃ困る。せめてこれを受けて、それでも勝てると思うのなら言うことだ」
『これ……。珠子、何の話だ』
「ユロ、絶対に彼からよそ見はしないで。よそ見してるうちに斬られるわよ」
『斬られる? アイツかなり離れてるんだぞ、無理に決まってる。むしろ隙だらけじゃねぇか、先手打つチャンスだろ』
「ダメよ、それでも」
『ここまできて怖気つくのか? アイツ、俺たちより弱いんだろ? なら別に警戒する必要なんて―』
ユロがつい視線を珠子に向け、意識がオリバから逸れた直後。
―オリバが動いた。
「……月光―」
月光、と、誰にも聞こえないぐらいの小さな声を口の中に漏らし、鞘から少しだけ剣を抜き、それと同時に地面を蹴る。
すると目にも止まらぬ、否、そもそも見えないぐらい速さでユロに急接近し。
『―っ!? ちょっ!?』
「バカっ!」
「―斬ッ!!!」
そのまま剣を振り抜く。
これがオリバの切り札である、「月光斬」だ。
初見ならあまりの速さに回避が不可能に近い技なため、完全に油断していたユロは視認するのがやっとなぐらいだったが。
「……ふぅ。やっぱ防ぐか」
「そりゃそうよ。何回その技を見てきたことか」
すんでのところで珠子が、オリバとユロの間に小規模の氷壁を出したため、ユロの身体が両断されることはなかった。
『な、ななっなんだよ今の!? あの速度、俺の速さ以上だぞ、反応できなかった……どういった能力だ?』
「違うわ。オリバは無能力者。あの技は単に血の滲むような努力によって手に入れたものよ」
「なんだ、ルイ褒めてんのか?」
「だまらっしゃい裏口入学のバカ」
「それ浩介にも言われたぞ……」
悲しきことに、オリバの裏口疑惑は拭えないようだが、そんなことでは挫けない。
「二人がかりじゃ俺はお前らに勝てない。それは認める。だがな、そこのプラッシュドールが俺の攻撃を見切れない以上、ルイ、お前はそいつのお守りをしながら戦わなければならない。ある意味ハンデを背負ってるようなもんだろ」
「まあそうね、私には効かないとしてもユロになら―」
珠子が言い終わるのを待たずに、オリバは、今度は予備動作なしでユロに急接近した。
『来たっ!?』
「このっ!!」
先程と同じように珠子が間に氷壁を具現し、なんとかオリバの速攻を防ごうとする。
「―バカだなッ! 隙だらけだッ!」
「っ!! しまっ!?」
その珠子の行動を予測していたのか、オリバはユロに攻撃をすることはなかった。
……が。氷壁で守られたユロとは打って変わり、無防備となってしまった者、即ち珠子に。オリバの速攻が襲いかかる。
鋭い剣身が珠子の右肩にスッと綺麗に入り、そのまま斜めに綺麗にズバッと斬る。
もちろん大量の出血が伴い、唇を噛んでも抑えきれない尋常じゃない痛みも襲い掛かる。
「ッッッッッッ……………!!!」
力が抜け、それでも何やら必死に右腕を斬られた胸に持っていく珠子。
『珠子! お前大丈夫……な訳ねぇよな。……アイツは』
あたりを見渡すも、すでにオリバはどこかへ消えてしまっていた。
「ユロ。……30秒だけ、私を守りながら耐えて、ほしいの」
『30秒? てかお前喋らない方が』
「30秒あれば……負傷箇所を急速冷却して……処置はできる。あとは一応の保険も……」
30秒。それは、普通は何でもない少しの時間だが、相手は雷よりも速く移動し、攻撃する男。どこから刃が襲いかかってくるか分からない以上、次にユロがオリバを見る時、それはすでに防御体制を取らないといけないと同義。
「だから30秒……耐えて。お願い……!」
『……分かった。ここで死なせるなんてことはできねぇしな』
そう言って、ユロは360度全方位、どこから来るかわからない脅威に備え、そのうちに、珠子は斬られて赤黒くなった胸部に右手を当てる。右手が触れている箇所からジワジワと、傷口を氷が覆っていき、これ以上の出血を抑える。
『このまま30秒経てばいいんだけどな……』
ユロが警戒しているせいか、はたまたユロを舐めているのかは定かではないが、一向にオリバから仕掛けてくる気配がないのが現状。
そして、10秒、20秒が過ぎた時。
「月光斬」
『(来たっ!?)』
音もせず急接近してきたオリバに、今回こそは万全の状態で構えていたユロは、即刻右手を前に出す。
『電光弾っ!』
超速の雷弾と音速の剣撃が互いの威力を削ぎ合い、相殺する。
その後はとても激しい攻防戦だった。
珠子の始末を急ぐオリバと、そうはさせないユロ。
オリバが瞬間移動するたびに、ユロはなんとか追いつき、阻止。その展開が残り10秒から5秒までの間で続いた。
しかし。何度も防がれる己の攻撃の様に嫌気が差したのか。
今まで珠子の目の前まで瞬間移動をし、そこから攻撃を仕掛けていたオリバが、今度は足を大きく踏み込み空高く跳び、そこから―
「大――天空ッッ!!」
目にも止まらぬ速さかつ、珠子に飛び込む形で突きを行う。
『っ!? しまっ―』
一度の瞬間移動ならなんとかそのスピードに追いつけていたユロだったが、二度の瞬間移動となると、1回目にお互いが瞬間移動した時に生まれる僅かながらの時間差がさらに広がり、神速のスピードでは追いつかないほどの時間差が生じる。
つまり、行かせまいと一回目の瞬間移動ではなんとか追いつけたユロだったが、不意の二度目には全力を尽くしても間に合わず、オリバの侵入を許してしまったのだ。
後2秒。
間に合うはずがない。
『くそッ!』
ユロは守りきれなかった自分を卑下し、珠子の悲惨な最期を見たくなかったのか、はたまた珠子を死なせてしまった責任から逃れたかったのか、その光景から目を逸らした。
見えない血飛沫の代わりに、太い悲鳴が鼓膜を埋め尽くす。
そしてバタリと地面に倒れる音が聞こえたユロは、少しずつ、瞼を開けていった。
―しかし、瞼を開けた先に見えたものは、ユロの思っていた光景とは真逆のもので。
『な、なんで……』
「う…………がぁっ……」
オリバが腹部に氷柱を受けて、倒れていたのだ。
さらには突きをもろに受けたはずの珠子は、患部を完全に凍らし、元気にその場で立っていた。
「ユロがまだオリバの対処に慣れきってないから。一応の策で、地下に水を張り巡らせておいたのよ。それでなんとかなった」
『だからさっき保険とかなんとか言ってたのか……』
珠子は、側で呻きながら地面に倒れているオリバを見つめる。
そして、携帯していたハンドガンを右手で持ち、オリバにその銃口を向ける。
『おい約束忘れてんじゃねぇだろうなっ!?』
この行動にはユロはいてもたってもいられず声を荒げた。
「別に忘れたわけじゃないわよ…。ただ、彼の武器を捨てるにはこうしないと」
『武器……? アイツの剣はそこにあるだろ』
「違うわよ」
そう言うと、珠子は迷いなくトリガーを引き、オリバの太ももに向けて、銃弾を放った。
「ゔっ………!?」
「足、封じとかないと彼、瞬間移動で逃げたり、また攻撃してくるでしょ」
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携帯していた無線機から、振動が発せられる。
「ん、片瀬か?」
浩介がそれを手に取り、自身の右耳に添える。
「どしたー」
[こちらスワーム担当組。オリバの無効化、および拘束に成功したわ]
「よし、ならあとは俺らの方を済ませればいいってわけか」
[まあそうだけど………。私個人としてお願いがあって]
「……………嫌な予感がするが。一応聞いといてやる」
[あら嬉しい、ならこれが終わったら浩介と私と二人だけで深夜のデートでも―]
珠子が言い終わるのを待たずして、浩介は通話を切った。
「……はぁ」
「まあ珠子の気持ちもわからなくはないけど」
「玲、お前どっちの味方だよ」
「俺は親友に一途な女の味方だ」
「……はぁ」
溜め息を吐くたび幸福が出ていく、そんなことはわかっているが、吐かないと人生やっていけないと感じる今日この頃。
そのため息をもって会話を終わらせた浩介は、地獄のデートのことは一旦忘れ、気持ちを切り替えて前方を向く。
「……珠子とユロはやったんだ」
「ん…」
「なら俺らができて何ら違和感はない」
「あぁ」
「―だから」
今の今まで電話の終わりを待っていた、前方の敵に対してこう告げた。
「「俺たちが絶対に負ける事はないッッ!!」」
「………………なるほど」
そして律儀に待っていた、ロンリー軍少将、ライドリッヒは。
「君たちがルイではなかろうに、よくそんなことが言えますね……」
自身の従える土人形を総動員して、今までの彼らとは違う雰囲気を察し最大限に警戒しながらも、その身に宿る大地の力を存分にふるった。




