第四夜 「黎明ノ夜」
薄明かり。太陽の気配。命の匂い。
夜が、終わろうとしている。
死んだ街は、常に一夜で夢のように消え去る。
そして始まるいつもと同じ日常の中では、本当にあの夜は夢のようで。
もうあの夜を訪れなくなった今でも、時々疑ってしまう。
これは、そんな夜を歩いた僕の軌跡だ。
不思議なもので、これだけ夜更かししているというのに、昼の生活には一切影響がない。
やはりこれは夢なんじゃないか。そう思うときがたまにあるが、いくらなんでもここまでリアルな夢があったら困る。
つまり、ここは俗にいう夢とはことなるモノだ。たぶん、きっと、おそらく。
そして、この夜はどこまでも命の気配に満ち溢れている。
命は、ここには自分ひとりの分しかない。なのに、この夜は命の気配だけが至るところをうろついている。
この夜には、もしかすると僕以外にも誰かがいるのかもしれない。
その誰もが今の僕のように一人きりで、ほかの誰かの気配をうっすらと感じるだけで――
それは少しさみしくて、とても普通なことだと思う。
自分を誰かと繋げることなんて、出来ないのだから。
互いの気配を感じあえる。人と人とのつながりの本質は、そこにあるのかもしれない。
そこに誰かがいて、その誰かもここにいる僕の気配を感じている。
一人ぼっちの僕は、どうやらこの世界で最も孤独と縁遠い人の仲間入りをしていたらしい。
ついでに、誰かをこうやって孤独から切り離すことで、存在の証もたてられているようだ。
けれど、それでいいのだろうか。
こんな仮初の証で、自分が生きている価値があると安心してもいいのだろうか。
そもそも、仮初でない生の証なんてあるのだろうか。
……知っている。生に価値なんて無い。
今手にした証でさえ、僕の思い込みの産物でしかない。
だとすれば、生きている価値や生の証なんてものは妄想の産物に過ぎないのか。
生きていることの証明や生きる価値を誰かに依存したって、答えは返ってこない。
決めるのは、いつだって妄想に逃げ込んだ自分だ。
ありもしないものにすがってまで自分を正当化したがる情けない自分が、命の価値を作る。
路傍に転がる石のような命を、必死に価値ある宝石だと思い込む。
石くれの中で自分だけは宝石なんだと信じようとする。
優越感欲しさのその考えが浅ましくて吐き気がした。今までの自分だった。
気がつけば、本当に吐いていた。
胃の内容物と一緒に自分の俗悪さも吐き出しているようで、少しだけ気分が良かった。
そんな自分は本当に俗物なのだと思い、吐きながら泣いた。
やっぱり、生きる価値なんて何一つ無い路傍の石くれであるのは、怖いんだ。
だから、答えを出すのはもう少しだけ待ってほしい。
僕が、答えと向かい合えるようになるまで。




