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レオニスは仕方なく呼び出しに応じ、双子宮のある場所へ向かうとそこには既にうお座の皇子フェルグ、みずがめ座の皇子スゥが待っていた。
「レオニス。来てくれたか」
「お主が時間前に来るとはなぁ……明日は槍が降るかもしれんのう」
「……ほざいてろ」
たまたま開始時間前に到着しただけなのに、この言われようだ。それもそのはずで、レオニスは基本時間を守らないことで有名である。遅れてくるなんて日常茶飯事、最悪は呼び出しに応じないこともある中で約束の時間前に到着するというのはそれほど珍しいということだ。
適当な椅子にどっかと腰を下ろし、やんや言ってくる二人の言葉を頬杖をつきながら聞き流していると、やや遅れてふたご座の皇子ポルカとてんびん座の皇子カマリが顔を出した。
「やあ。遅れてすまない。では、早速だが話し合いを始めようか」
「こ……こんにちは」
恐る恐る挨拶をするポルカに気が付いたレオニスは、ふと視線を移すと小さく震えながらこちらをじっと見つめているポルカが立っていた。まだ幼いポルカにとってレオニスの出立が怖いというのもわかる。だが、ポルカは同じ皇子として自分ができることを必死に考え行動してくれていた。それに対し、レオニスも応えなければならないと思ったレオニスはすっと手を伸ばしポルカの頭を撫でた。傷だらけの大きな手だったかもしれない。ぶっきらぼうだったかもしれない。だけど、これがレオニスがポルカにできる最大の挨拶なのかもしれない。頭を撫でる以外の選択肢をとろうとしたとき、声に出せば更に怯えてしまうかもしれないし、周りが挨拶をしてきたときと同じように無視をしてしまえば不安に思ってしまうかもしれない。そう思ったレオニスは自分ができることといえば、こうして小さな小さな皇子が自分にきちんと挨拶をしてくれたということに対し、きちんと応えたのだ。
「……えへへ! レオニスおにいさん、ありがと」
「……おう」
頭を撫でられたポルカはにこっと笑うと、ポルカの肩にいるカスターに「うれしいね!」というと、カスターも嬉しそうに笑って返事をした。満足そうにスキップをしながら椅子に座ったポルカを確認したカマリが薄く笑いながら「では改めて」というと、場の空気は一気に引き締まった。
話し合いが終わり、緊張感から一気に解放された皇子たちはそれぞれ解散していった。
「レオニス。気をつけて帰るんだよ」
「スピカにもよろしく言っておくんじゃぞ」
気を付けて帰れ……か。特に帰る場所なんかないとレオニスは誰にも聞こえない声で呟いた。帰ったところで何があるわけでもない。帰った先にあるのは果てのない戦場だというのに、自分に気を付けて帰れという奴はどんな気持ちで言ったのだろう。
「わかるわけねぇよな……」
その声はレオニスは今まで出したことがないくらい、どこか寂しげのある声だった。来る日も来る日も戦いにまみれ、溺れてもまだ満たされない何かがあった。それは単に「暴れたい」という欲求が満たされていないだけなのか、それともほかにあるのかレオニス自身にもわかっていなかった。暴れても暴れても、敵を屠っても屠っても満たされないこの気持ちは一体何なのだろうか……考えるだけ無駄かと思ったレオニスは大きく溜息を吐きながら自分がいるべき場所へと帰っていった。
帰って来て早々、目の前には今までに戦ったことがない異様な物体が飛び込んできた。まるで獣のような反射神経でそれらを避けると、すぐさま背中にある武器で応戦するとそれらは霧散していった。
「なんだこいつら……まるで手応えがねぇ」
黒い影のようなものはそれだけに留まらず、レオニスの周りにぼこぼこと湧き出てあっという間に囲まれてしまっていた。
「ちぃ。これが封印と何か関係あんのか?」
さっき、カマリの話に封印がどうたらとあったことを思い出したレオニスはほんの少しだけ苦虫を潰したような顔になった。武器を構えなおし、周囲の様子を窺っていると背後から何やら空気が動く音がした。
「っ! いつの間に!」
意識していない箇所からの奇襲に思わず声が漏れたレオニスは咄嗟に武器を構えるも、そこから攻撃に転じるまでの時間が足りない。思い切り舌打ちしながら抵抗を続けていると、どこからか桃色の光が黒い影のようなものを貫いていた。
「ダメだよ? 余所見しちゃ」
桃色の光に貫かれた黒い影のようなものはそのまま霧散すると、少し遅れて大きなロッドを持ったスピカが「レオニスー! お迎えにきたよー♡」とウインクしながらレオニスに手を振った。
「スピカ……てめぇ」
「もう。そんな顔しないの。言ったでしょ? ボクがしたいからしてるんだって」
怒るレオニスに悪戯っぽく笑いながら指でちょんと肩をつつくスピカ。そしてくるっとレオニスと背中合わせになると、スピカはロッドを構えた。
「ボクはね、やりたいことに正直なんだ。あ、カワイイことはそれよりももっと上だけどね。やりたいことを我慢するなんて、ボクにはできない。できるんだったら、それをやってから後悔したい。やらないで後悔なんてつまんない。だからさ、ボクは今、レオニスとこうして戦いたい。この気持ちに嘘はないよ」
けらけらと笑いながら言うスピカだが、その言葉とは裏腹にどこか強い決意のようなものを感じたレオニスは、ふっと薄く笑みを浮かべ武器を構えた。そして力を込めるとヴンと音をたて、暴力的な刃が「ようやくか」と言いながら目覚めた。激しく回転する刃の音が辺りに轟く中、スピカもロッドが濃いピンク色に変化すると、スピカの前には薄いハートでできた防御膜が張られていた。二人の武器にはそれぞれ司る星座のコアが煌めき、いつでも戦闘が可能状態を示していた。
「勝手にやられんじゃねぇぞ」
「そっちこそ。サポートがいるならいつでも言ってね♡」
「冗談」
そう言うと二人は同時に地を蹴り、黒い影のような物体に突っ込んでいった。




