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「やっほー!」
「あ、スピカちゃん! いらっしゃーい! 注文の品、入ってるよー!」
「やったー!」
スピカはとある洋服屋に来ていた。ここはスピカ好みの洋服がずらりと並んでいて、初めて来たときに衝撃を受けたのを覚えていた。それ以来、スピカは洋服は絶対ここで買うと決めており、新作が入るとチェックを欠かさなかった。また、店員とも仲がよく新しい洋服について意見交換をするまでとなっている。
「おっまたせー! じゃん! 今季イチオシのシャツですぞー!」
「うわー! カワイー! ねぇねぇ。試着していいかな?」
「モチのロンですぞ!」
「ありがとー!」
まだ誰もいない店内で一人試着室に入り、中にある鏡で全身を確認するスピカ。自分の好みがまるでパズルがぴったり入る時と同じ感覚になり、思わず背筋がぞわりとなった。
「白もかわいいけど、黒もかわいいよね」
どっちも試着をし、満足したスピカはそれぞれ二つずつ購入する為ショッピングバスケットに入れた。他にもスピカ好みの新作アクセサリーや服飾が店内に並んでおり、それだけでスピカはウキウキが止まらなかった。
スピカ。おとめ座のコアを継承した家系の末裔で、愛らしい顔立ちをしており「カワイイ」がよく似合う男の娘。思考の基準は「好き」か「気分が上がるかどうか」であるため、一見自己中心的に見られがちだが、実は誰かの為に努力をすることを美徳としているなど、世話好きな一面もある。特にしし座の皇子であるレオニスのことは時間を守ることができない手がかかる大きな子供だと思っており、戦いを終えたレオニスを迎えに行ったり手先の器用さを生かし破れた衣服を繕ったりしている。レオニスからはうざったがられるが、スピカは「やりたいからやってるの」とスピカは気にしていない。傍から見ればいいコンビではある。それは他の皇子たちもおもっているようで、特にみずがめ座の皇子スゥはそんな様子を見てはよくからかっている。
スピカは特にファッションに力を入れており、こうして気に入ったブランドの洋服を見ては買い、そしてレオニスにも着せようと企んでいる。本人は嫌がってはいるものの、スピカの猛アタックの前には獰猛なレオニスも折れるほど迫るため、仕方なく渋々着てみると……結構サマになっていて思わずスピカは小さく拍手をする。元々引き締まったレオニスの体にぴったりなサイズは何を着てもサマになっていて、スピカの「色々着せてあげたい欲」がぐんぐん上昇していった。結局、購入したすべての洋服が似合うことが分かったスピカは満足そうな表情をしている一方、あれこれ着せられたレオニスはぐったりと頭を垂らしていた。
ファッションセンスもそうだが、戦闘に関してもレオニスとの連携はばっちりだった。常にレオニスの行動の先を読みながら攻撃をするスピカはレオニスにとって良い司令塔となっている。レオニスは近接を得意としているが、スピカは中距離の攻撃を得意とし魔法や杖から延びる鞭のようなものを駆使して戦う。魔法はスピカが思う「カワイイ」を想像すると杖が光り、それが浄化作用をもたらすというもの。鞭のようなものは魔法が間に合わなかったときの緊急用として用いるときが多く、魔法を打ち終わったあと、鞭のようなもので応戦する姿が度々目撃されている。それもレオニスに当たらない絶妙な角度で攻めていて、それもレオニスは信じているのか全く動じている様子もないことから、表面上は嫌がっていても戦闘に関しては心を許しているといえるのではないだろうか。
気になったアクセサリーを試着したり、服飾を手に取ったりしているスピカはふと何かの気配を感じた。それはまるで誰かに呼ばれたような、でも誰なのだろう。おかしいなと思いながら再びアクセサリーに目をやるとまたどこからか気配を感じた。まさか……二度目の気配でなんとなく確信に変わったスピカの表情はいつになく真剣だった。アクセサリーを選んでいる手が止まっていることに気が付いた店員がそっとスピカに近付き、何かあったのかを聞いてみるとスピカはすぐににこっと笑い「なんでもないよー」といつもの笑顔に戻っていた。それにほっとした店員はいっぱいになったショッピングバスケットをスピカから受け取り、レジ後ろで預かった。新しいショッピングバスケットを受け取ったスピカは表面上はにこにこしているが、内心では少しひやひやしていた。
「まさか……ね」
店員に聞かれない位の小さな声で言うと、再びあの気配を感じた。もうこれは確信的だと思ったスピカは店員さんに謝った。
「ごめぇん。ちょーっとレオニスのお迎えに行かなくちゃいけなくなったー」
「あ、そうなんだ。よかったら取り置いておきますよー?」
「え? ほんと? 嬉しい! 近い内に絶対買いに来るから、お願いしていい??」
「モチのロン! 待ってますぜぃ!」
「ありがとう♪ チュウ!」
こうしてスピカはお気に入りの洋服屋に別れを告げ、すぐさまレオニスの迎えへと駆けた。嫌な予感が的中していなければいいけど……その声は誰の耳にも入っていなかった。




