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荒んだ大地に胡坐をかいて、鈍色の空を睨んでいる青年がいた。燃えるような赤いショートヘアー、刃物のように鋭い目、黒のタンクトップから覗く禍々しい入れ墨は両肩から伸び、左側に至っては頬あたりまであった。ライムグリーンのパーカーのジッパーをすべて外し、だらしなく着崩している姿は何とも近寄りがたい雰囲気を放っていた。黒のパンツに同色のハイカットスニーカーはシンプルでありながら存在感が非常に強く、青年の雰囲気をさらに引き立てていた。背中にはまるでノコギリのようなギザギザの刃を取り付けた部分と違った形状の刃が取り付けられた剣を背負い、その剣一本だけで荒々しさを表すには十分だった。剣の丁度真ん中にあたる部分には柄がありその柄には黄色く光る記号のようなものがぼんやりと浮かんでいた。そして、青年の爪はまるで魔人のように異様に伸びた爪は背中に背負った剣と同じくらいに鋭かった。
「もうレオニスったらー。何も言わないで出ていくとかありえないんですけどー」
レオニスと呼ばれた青年が声のする方を向くと、そこにはレオニスとは対照的ななんともきらきらした少年が立っていた。ピンク色のショートヘアーにややだぼっとした大き目のジャケットの袖は眩しいくらいのピンク色で、インナーはそれとは対照的な黒色を身に着けていた。可愛くリボンまで結ばれていた。腰元にはこれまた大き目なハートを象ったバングルをし、足元は白地にピンクの紐が通された先端にはまるでハートをモチーフにした装飾の真ん中には何やら記号のようなものがうっすらと浮かび上がっている大きなロッドを手にしていた。
「……うっせぇ。てめぇに関係ねぇだろ。さっさと帰れ。スピカ」
スピカと呼ばれた少年は嬉しそうにスキップをしてレオニスを後ろからハグをすると、レオニスは嫌そうに顔を歪め、引きはがそうとするも思いのほかスピカの力が強く引きはがすことができず諦めてしばらく好きにさせることにした。それにしても……。
「今日も戦ってたんでしょ?」
「……ふん」
「もう。レオニスったら。あ、レオニス、ちょっとそのまま動かないで!」
「あ? んだよ」
「だーかーら。動かないでってば」
動くなと言われたレオニスには状況がわからず、仕方なく言われたままじっとしているとスピカは腰のポーチから何やら取り出した。準備ができたスピカはレオニスの首元付近に準備ができたものを通していく。すいすいと慣れた手つきで事を進めていき、さっと仕上げていった。
「はい。もう動いていいよ」
「なんだったんだよ?」
「ん? レオニスのタンクトップがほつれたからささっと直しただけだよ」
「んだよ。別にそんなんおめぇがやることじゃねぇだろ」
「いーの。ぼくがしたいって思ったんだから」
「……勝手にしろ」
ふんと大きく鼻息を漏らし、再び鈍色の空を見た。雨は降りそうにないのだが、レオニスはそれとは別のことを考えていた。レオニスは魔人として生まれ、孤独な幼少期を過ごしていると先代のしし座の皇子に拾われ彼の運命は一変する。個として生き抜くために格闘術を叩き込まれたレオニスは、次第に才能を開花させた。先代が没する際、無理やり交わされた「血と魂の契約」も相まって半神に近い存在となった魔人レオニスは最早敵なしの力を手に入れた。鬼神の如く戦場を駆け巡るその姿は歴代のしし座の中でも最強と謳われ、非常に好戦的なレオニスは相手が諦めるまで決して力を緩めることをしない。逆に戦意のない者には背を向けるなど、勝つことにしか興味がないというのを具現化したような存在だ。
しかし、レオニスは皇子の宿命というものには一切興味がない。ただ戦うことができればそれでいい。例え宿命に背いたとしても。
「……あ、もしもーし。こちらスピカ。え? うん。はーい。伝えておくねー」
スピカは端末からの声に応答し、内容を把握してから端末をしまうとにこーっと笑いながらレオニスを見た。
「ねぇレオニス。これから話し合いがあるんだってー」
「……で?」
「参加してって。カマリが」
「……あんのクソジジイ……オレは行かねぇ。めんどくせぇ」
「来ないとダメみたいよー。話したいことがあるみたい」
「……はぁ……だったらてめぇも……」
「ごめぇん。ボク、これからどーしても外せない用事があるんだ」
「……なんだその用事ってのは」
「新しい洋服を買いに行くんだー。レオニスの分もちゃんと予約してあるからね☆」
「……いらねぇよ」
「そんなこと言わないでー。ちゃーんとレオニスにもぴったりなものだからさ。ね?」
「……」
「とりあえず、ボクは先に行くね。あとでどんな内容だったか聞かせてね。あ、洋服。楽しみにしててよね!」
いそいそと駆け出していったスピカをジト目で送り出したレオニスは空よりも重い重い溜息を吐きながらゆっくりと立ち上がり首を鳴らした。
「……うぜぇ」
レオニスが歩いた後には無数の躯が転がっていた。




