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第98話:剣の果て、道の始まり

 試合が終わった後も、五人に休む暇は与えられなかった。

 高校生、そして一般の指導者たち――。

 誰に掛かっていっても、そこには不動の強さと、明鏡館の熱意を真っ向から受け止める包容力があった。

 指導者が変われば、見える景色も変わる。

 自分でも気づかなかった足の踏み込みの癖。竹刀を握る手の内の緩み。

 五人は、剥き出しの自分を突きつけられながら、必死にその教えを吸収していった。

 そして、全ての稽古が終わった。

 康介と共に、宇佐美館長の前に整列する五人。

「……よく、頑張ったの」

 宇佐美の言葉は、驚くほど穏やかだった。

「お前たちが強くなりたいと願う気概は、その剣を見ればわかる。じゃがの、今のお前たちは『剣』ばかりを追い求め、大切な『道』を疎かにしておるように、わしには見える」

 その言葉の意味は、仁明館の少年たちの、一糸乱れぬ礼節や立ち居振る舞いを見ていれば、痛いほどに理解できた。

 五人は深く、魂に刻み込むように頭を下げた。

 帰り際。

 夕闇が迫る武道館の入り口に、宇佐美と仁明館のメンバーが見送りに立った。

「今日は本当にありがとう! また絶対に来てぇな」

 加賀谷が、試合の時の圧力が嘘のような、眩しい笑顔で手を振る。

「凛ちゃん、また来てな。楽しみにしとるから」

 中村の呼び方の変化と、親しみ易い方言。

 凛もまた、晴れやかな笑顔で頷き返した。

 和気あいあいとする少年たちを横目に、宇佐美が康介を鋭い目で見つめた。

「ところで成瀬。次はいつ来るんじゃ?」

「えっ……。あ、はい。予定を確認してから……」

「馬鹿者が。お前の虎皇旗での目標は何じゃ。優勝を狙っとるんじゃろうが。それまで、暇を見つけては通うてこんかい!」

「――はいっ!」

 康介の背筋が、現役の弟子の顔に戻って伸びる。

「ええか。師匠の成長無くして、弟子は育たんぞ」

 その言葉を背に受け、康介は「肝に銘じておきます!」と深く頭を下げた。

 ワゴン車に乗り込む五人の横顔には、来た時とは違う、静かな、しかし消えない闘志の火が灯っていた。

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