第94話:古強者の眼光
「成瀬、遠いところよく来たな」
宇佐美館長の低く、地を這うような挨拶に、康介の身体が弾かれたように直立不動になった。
「はい。この度は無理な願いを聞いていただき、ありがとうございます」
康介が深く、長く一礼する。
そのただならぬ空気に、五人も慌てて立ち上がり、頭を下げた。
「よろしくお願いします!」
「……よろしく、お願いします」
五人の挨拶に、宇佐美はふっと表情を緩めた。
「この子たちが、お前の教え子か。……ふむ、良い目をしているな」
意外にも温かい、慈父のような眼差し。
瞬たちはその笑顔に、わずかに肩の力を抜いた。
だが、その直後だった。
「ところで、成瀬。……お前、防具はどうした?」
宇佐美の声から、温度が消えた。
冷徹な響きに、康介だけでなく五人の背筋までもが凍りつく。
「い、いえ……今回はこの子たちに経験を積ませるのが目的でしたので、私は……」
「わしの所へ来るのに防具を持ってこんとは。貴様、たるんでいるんじゃないのか」
瞬たちを見る時とは似ても似つかぬ、獲物を射抜くような鋭い目付き。
康介の額に、タラリと冷や汗が流れた。
「次……っ! 次回は必ず、持参いたします!」
「次だな。必ず持ってこい。……まずは防具を着けて準備させろ」
宇佐美の唐突な指示に、康介が思わず聞き返す。
「準、備……ですか?」
「試合をするに決まってるじゃろうが。実力を見ん事にはなんにもわからん」
有無を言わせぬ宇佐美の気迫に、五人は弾かれたように防具袋へ手を伸ばした。
得体の知れない怪物の前で、自分たちの「今」が白日の下にさらされようとしていた。




