第87話:光の集う場所
虎皇館が去り、静まりかえっていた会場に、錬成会の終わりを告げるブザーが鳴り響いた。
「終わった……」
瞬が、肺にある全ての空気を吐き出すように呟く。その一言で、極限まで張り詰めていた明鏡館の空気が、ふっと緩んだ。
「……なんか、色々ありすぎて疲れたわ……」
いつもの凛々しさはどこへやら、凛がその場にへなへなと脱力する。
「いずれにせよ、ついにAリーグまで辿り着きましたね」
佐伯がメガネを外し、レンズの曇りを丁寧に拭いながら、静かに、だが確かな達成感を口にした。
「面白かったぜ」
大吾だけは相変わらず血気盛んだ。だが、その隣で守屋だけは、虎皇館が消えていった扉の向こうを、いつまでも静かに見つめていた。
自分たちは、五人で戦ってきた。仲間がいたから、あの漆黒の威圧感にも屈しなかった。全員がその絆を噛み締めていた、その時――。
「皆さぁぁ〜ん! 僕、感動しましたぁ!」
空気を読まない大声と共に、泣きながら走ってくる人影があった。杉森だ。
「さっきの試合、熱すぎます! 虎皇館怖すぎです! 凛さん、怪我はないですかっ!?」
「よく喋る奴だな。少し落ち着け」
凛に詰め寄ろうとする杉森の首根っこを、大吾がひょいと吊り上げる。
杉森に続いて、青原中のメンバーや、Bリーグで戦った他校の連中も次々と集まってきた。
「おい、ようやく『誘い』をマスターしたからな。今度はお前だぞ」
大吾の不敵な笑みに、青原中の大将が顔を引きつらせる。
「……もう勘弁してくださいよ。あんな試合を見せられた後に、あんたとはやりたくない」
「また言ってるわよ、この人」
凛が呆れたように笑う。
「虎皇旗に出るんだろ? 応援してるぜ!」
「明鏡館、頑張れよ!」
気づけば、明鏡館の周りには温かな人だかりができていた。
圧倒的な強さで周囲を寄せ付けない虎皇館。そして、戦った者たちが自然とエールを送りに集まってくる明鏡館。
対照的な二つのチームの在り方を、康介は誇らしげに、そして静かに見つめていた。




