第82話:共鳴する魂
大将戦は、見る者の息を呑ませる互角の攻防が続いていた。
(この男……強い。守屋先輩を差し置いて大将に座る理由が、今ならわかる)
虎皇館の大将は、大吾の底知れぬ力に震撼していた。
(こいつ……さっきの新免と同等か、それ以上か。……強い!)
大吾は、目の前の男の厚みを感じていた。認め合った二人の男。そこにはもはや、虎皇館も明鏡館も、敵も味方も関係なかった。ただ純粋に、互いの魂をぶつけ合う二人の世界が広がっていた。
「……なんかあの二人、楽しそう」
凛が、祈るように手を握りしめながら呟いた。
「この状況でか? おかしいぞ、あの二人……」
瞬が興奮で声を震わせながらも、呆れたように、けれど羨ましそうに言う。
「気持ちで負けるなッ!」
突如、佐伯が喉が張り裂けんばかりの声で叫んだ。
普段の冷静な彼からは想像もできない熱量に、隣の守屋が目を見開く。だが、守屋もすぐに続いた。
「そこだ、チャンスだ! 行け、大吾!」
その熱は、虎皇館サイドにも伝播した。
「二本いるんだ! 止まるな、行け!」
新免が立ち上がり、喉を枯らして叫ぶ。
「行けぇぇーっ!」
他のメンバーも、これまでの沈黙を破り、一人、また一人と声を張り上げ始めた。
どちらのチームも、心を一つにして大将の背中を押す。
(仲間の応援が……これほど力になるなんて……!)
虎皇館の大将の心が、かつてないほど激しく躍動する。
(お前たちの想い、俺がぶつけてやる!)
大吾の高揚も最高潮に達していた。
大吾が面を打とうと、重心をわずかに前に傾ける。その刹那の隙を、虎皇館の大将は見逃さなかった。まさに最高のタイミング。大吾の脳天を貫く『出頭面』へと跳んだ。
「ヤバい!」
瞬が叫び、虎皇館サイドが勝利を確信して前のめりになる。
パァァァァンッ!
乾いた音が一つ、試合場に轟いた。
大吾の返し胴。
「胴あり!」
あまりに見事な、流れるような返し胴に、三人の審判の赤旗が迷いなく上がった。
「……誘った」
守屋が、戦慄と共に驚愕の声を漏らす。
「すげぇ……すげぇぞ大吾!」
瞬が拳を突き出し、凛が涙を浮かべて笑う。
「これって……もしかして……」
凛が確認するように、震える声で尋ねる。
「ええ。勝ちましたね」
佐伯が、眼鏡の奥の目を細め、はっきりと言い切った。
大吾が一本をもぎ取った。その瞬間、明鏡館の勝利が確定した。




