表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
81/121

第80話:首の皮一枚

 副将戦、守屋もりやの勝利。その瞬間、明鏡館めいきょうかんのリードは「二勝一敗、本数で二本リード」に広がった。明鏡館サイドに、張り詰めていた糸が緩むような安堵の空気が流れる。

 だが、その緩みを見逃さない男がいた。

「……浮かれるな。まだ終わってねえぞ」

 面の中から、大吾だいごが低く、地を這うような声で呟く。

 リーグ戦形式の練習試合。もし大吾が二本負けを喫すれば、本数で並ばれ、チームとしての勝利は露と消えて引き分けに終わる。虎皇館こおうかんBチームにとって、それは「敗北」という最悪の屈辱を免れる、唯一残された蜘蛛くもの糸だった。

 副将・新免しんめんが精根尽き果てて戻った時、虎皇館の陣営に重く沈んだ空気が漂っていた。大将は、失意の新免に視線一つ向けず、静かに立ち上がる。

(一本も許されない。二本取って、引き分けに持ち込む。……それ以外に、俺たちが生き残る道はない)

 虎皇館の大将の瞳には、先ほどまでの悲哀はない。そこにあるのは、窮鼠きゅうそが猫を噛むような、鋭く、危うい光。エリートとしてのプライドを捨て、生存本能だけで剣を握る者の狂気だった。

 対する大吾に、康介こうすけが鋭い声を掛ける。

「大吾」

 大吾は、面を被ったまま師の方へ向き直る。

「……まさか、引き分けにしろ、なんて言わないですよね」

 大吾は、仲間の戦績を背負いながらも、自分個人の「渇き」を隠そうとはしなかった。

「俺がそんなことを言うと思うか? ……トドメを刺してこい!」

 康介は、獰猛な笑みを浮かべて言い放つ。

「おっしゃあ!」

 大吾が両足で力強く床を踏みしめる。体育館の床板が鳴り、凄まじい気合いが振動となって周囲へ伝わっていく。

「始め!」

 審判の宣告と同時に、虎皇館の大将が弾けた。

 なりふり構わぬ猛攻。チームを救うため、そして自分の首を繋ぐために放たれる一撃が、大吾を襲う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【読者の皆様へ】 ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます! 本作は全160話完結済みです。 完結まで毎日2回(朝・夜)、欠かさず更新してまいります。 もし少しでも「続きが気になる」「瞬を応援したい」と感じていただけましたら、 **下の【ブックマークに追加】と、【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にして応援いただけると、執筆の大きな励みになります。 皆様の一票が、より多くの読者にこの物語を届ける力になります。 よろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ