第78話:鏡像の剣
構え合う守屋と新免。その静止した二人の姿に、真っ先に違和感を覚えたのは瞬だった。
「……なんか、構えが似てねえか……?」
瞬は自分の目を疑い、確認するように隣の凛へ視線を送る。
「似てるどころじゃないわ……うり二つよ」
凛もまた、信じられないものを見るような表情で固まっていた。
「構えだけじゃない。足の運び、剣先の揺らぎ、攻めの理詰めに至るまで……まるで……」
佐伯の言葉を、大吾が低い声で引き継ぐ。
「守屋のコピーだな……」
新免が、剣先をわずかに中心から外して「誘い」を入れる。
(……さあ、打ってこい。あなたなら、この隙を見逃さないはずだ)
その誘いに応じるように、守屋が鋭い踏み込みから面を放つ。
その瞬間。瞬の目に、攻防のすべてが克明に焼き付いた。
守屋の竹刀が新免の面を射抜くと思われた刹那。下から新免の剣先が跳ね上がり、守屋の竹刀の腹を捉えた。
――シャリッ。
鎬の擦れる音が、試合場に響く。
新免の竹刀が守屋の竹刀を鮮やかに滑らせ、面の軌道から外す。がら空きとなった守屋の頭上へ、新免の竹刀が振り下ろされた。
(当たる!?)
瞬が戦慄した瞬間、守屋がさらに一歩、深く前へ踏み込んだ。
新免の「擦り上げ面」を、あえて懐に飛び込むことで、元打ち(竹刀の根元での打突)で潰し、有効打突にさせない。
激しくぶつかり合う二人の身体。鍔迫り合いから離れ際、双方が同時に「引き面」を繰り出す。それは大きく振りかぶる動きを排した、手首の返しだけで剣先を落とす高等技術。
「あの擦り上げ面……守屋の得意技だ!」
瞬がたまらず声を上げる。
「引き面の打ち方まで、全く同じ……!」
凛も息を呑む。
「間違いない。……新免は、守屋に憧れていたんだ」
佐伯の言葉に、明鏡館のメンバーは絶句した。
柔らかな竹刀捌きと、多彩な応じ技。
白い道着の新免と、藍染の道着を纏った守屋。纏う色は違えど、そこには「二人の守屋」が、互いの命を削り合うような異様な光景が広がっていた。




