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第65話:Bリーグの激震

 Aリーグ昇格を狙う猛者がしのぎを削り合うBリーグ。

 D、Cリーグとは明らかに違う。張り詰めた緊張が、床を這うように広がっている。

 先鋒、しゅん

 対するは、主将格だった。

(……強い)

 対峙した瞬間にわかる。相手の自信に溢れた所作。これまでの相手のように、気圧されている気配が一切ない。

「始め!」

 審判の声と同時に、空気が変わった。

 瞬が立ち上がり発声する間もなく、相手が攻めてくる。

(速い!)

 瞬がバックステップで間合いを切ろうとする。

(こいつ、諦めない!)

 素早い足さばきで、さらに間合いを詰めてくる。無理に打ってこない。冷静に、こちらの動きを観測している。

 だが次の瞬間――。

 パァンッ!

 相手の竹刀が、瞬の面を捉えた。

「面あり!」

 会場がざわめく。

「……は?」

 大吾だいごが思わず声を漏らす。瞬が、一本を取られた。

 静かに開始線に戻る瞬。呼吸は乱れていない。だが、その目の奥に、わずかな違和感が残っていた。

(起こりが見えない……? いや、違う。“攻め込まれていた”んだ)

 相手は構えている。その剣先は確実に瞬の喉元に向けられている。

(始まる前から作っている……)

 りんが小さく息を呑む。

「……あの人、『心構え』ができてる……」

「瞬は始まってから作っている。……経験の差だ」

 佐伯さえきの分析に、守屋もりやが低く呟いた。

「瞬、始まる前から『作れ』!」

 大吾の叫びに、瞬がピクリと反応する。

(心構えができてないんだ――康介こうすけの言葉が蘇る。

(まだ遅いのか……なら!)

 瞬は大きく息を吸い込み、吐き出した後、止める。

 わずかに重心を前に。

 相手の眉が、ほんの一瞬だけ動いた。

「二本目!」

 パァーンッ!

 二人同時に飛び出した相面あいめん。今度はわずかに瞬が上回る。

「面あり!」

 一本取り返した瞬は、呼吸を整える。

(僅かな気の緩みが命取りだ)

 だが同時に、理解する。

(……ここは、そういう場所か)

 Bリーグ。単純な圧では崩れない。“理”を持った相手が揃っている。

 勝敗を分ける三本目。互いに動かない。観る。探る。削る。時間が、重く伸びる。

 ――先に動いたのは、相手だった。

 踏み込み。面。完璧な軌道。

(……来た)

 瞬の身体が、自然に反応する。最短距離の出小手。

 パァン!

「小手あり! 勝負あり!」

 礼を終え、コートを出る瞬。相手は面を外し、静かに一礼した。

「……強いですね」

 短い言葉。だが、そこには敗北の悔しさではなく、“納得”があった。

「やるじゃねぇか、瞬!」

 大吾が豪快に背中を叩く。だが、瞬の表情は引き締まったままだった。

「……危なかった。一つ間違えたら、普通に負けてた」

 その言葉に、空気が少し変わる。

「……いいね。ようやく“試合”になってきた」

 守屋の視線は、すでに次を見ている。さらに奥――白い道着の集団。

 その頃。Aリーグの一角。

「……始まったか」

 新免しんめんが、無表情のまま呟いた。

「Bリーグ、面白くなりそうですね」

 隣に立つ虎皇館こおうかんの選手が笑う。

 新免は答えない。ただ、わずかに口元を歪めた。

 Bリーグ。それは通過点ではない。“選別された者たち”が、さらに選別される場所。

 明鏡館の進撃は――ここからが本番だった。

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【読者の皆様へ】 ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます! 本作は全160話完結済みです。 完結まで毎日2回(朝・夜)、欠かさず更新してまいります。 もし少しでも「続きが気になる」「瞬を応援したい」と感じていただけましたら、 **下の【ブックマークに追加】と、【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にして応援いただけると、執筆の大きな励みになります。 皆様の一票が、より多くの読者にこの物語を届ける力になります。 よろしくお願いいたします!
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