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第62話:波紋と疑心
心影会の待機場所は、重苦しい静寂に支配されていた。先鋒が味わった「理解できない敗北」という猛毒は、瞬く間にチーム全体へ伝染していた。
次鋒戦。凛の剣に、もはや迷いはなかった。
(成瀬の娘……。そんな言葉、もうどうでもいい)
瞬に「凛が強いから勝ちたい」と言われたあの日、彼女を縛っていた呪縛は消えた。
パァーン!
鮮やかな胴が、勝負を決定づける。
中堅戦では、佐伯の攻めが冴え渡った。精密機械のような剣捌きの前で、相手は動きを完全に制御され、自分の剣道を見失った。
副将、守屋。
彼は目の前の相手を圧倒しながらも、その視線は一度も相手の目を見ていなかった。守屋が観ていたのは、常に会場の一番奥――Aリーグの試合場から、こちらを「観察」している虎皇館の白い影だった。
そして大将戦。大吾の野獣のような圧が爆発する。相手は竹刀を振ることすらできず、無残に打ちのめされた。
「……信じられない。あの心影会が、子供扱いされてる……」
観客席のざわめきが、波のように広がっていく。
Cリーグの他校の選手たちは、変わり果てた心影会の姿に、戦う前から戦意を喪失させていた。




