第61話:因縁の再戦(リベンジ)
Dリーグを全勝で駆け抜けた明鏡館。
次なる舞台、Cリーグのコートに足を踏み入れた瞬たちの前に、そのチームは待っていた。
「出たな、心影会……」
瞬が低く呟く。前回のリーグ戦で瞬を完膚なきまでに叩きのめした因縁の相手だ。心影会の面々は、前回チームが負けた雪辱に燃え、殺気立った円陣を組んでいる。
「先鋒は俺が取る。後は頼んだぞ。あの副将とは勝負をするな、足を使って逃げ切れ」
心影会の先鋒が、余裕の笑みを浮かべて指示を出す。
「自信のある顔をしてるな」
瞬が相手の先鋒を見つめる。
守屋が、一番奥の試合場――虎皇館が鎮座する場所を見据えながら静かに言った。
「僕たちが、あれからどう変わったか……。彼らに教えてあげよう」
合宿で康介や裕一という「本物」を見てきた彼らにとって、心影会の放つ威圧感など、飲み込むように押し返せる程度のものに過ぎなかった。
「瞬、行くぞ。……お前の剣道を見せる時だ」
大吾の力強い言葉と共に、先鋒戦の幕が上がった。
「……同じだ」
瞬が構えた瞬間、相手は前回同様、竹刀を右に開いて誘いを入れる。だが、瞬は動じない。かつて自分を迷わせたその構えに、微塵の恐怖も感じなかった。
瞬が中心を取りながら、じり、と間合いを詰める。
(さあ、打ってこい。前回と同じように返してやるよ)
相手が待つ。だが、瞬の攻めは止まらない。
(……まだ来るのか? 早く打ってこい……くそ、そんな近くまで来たら……!)
瞬の右足が動く。下半身の体重移動から始まる、予備動作のない面。
(間に合わ……)
パァーーンッ!
(……ない……!)
「面あり!」
瞬の迷いのない一撃が、心影会の先鋒を真っ向から打ち抜いた。
「二本目!」
一本取られた焦りから、相手がすぐさま間合いを詰めようとした――その瞬間。
パァーーン!
吸い込まれるように、瞬の竹刀が再び面を割る。
「面あり! 勝負あり!」
審判の声が響く中、凛が満面の笑みを浮かべる。
「うまい! 『無防備を打つ面』だわ!」
「……瞬はいつの間に、これほどの精度を。……ふむ、データを書き換える必要がありそうですね」
佐伯も驚きを隠せず、新たなデータを記憶にインプットする。
礼を終えて試合場を出た瞬の向こう側で、心影会の先鋒は力なく座り込んだ。
面を外したその顔は青白く、手ぬぐいを握る手は小刻みに震えている。自分がなぜ打たれたのか、どう反応すれば良かったのか、その答えがどこにも見つからない。
「……なんだ……今の。あんな奴じゃ……なかったはずだろ……」
呆然と呟く彼の視線は、もはや瞬の姿を追うことさえできず、ただ虚空を彷徨っていた。
「お前のおかげで、俺は強くなった」
瞬は、自分に限界を突きつけてくれたかつての強敵を、真っ直ぐに澄んだ瞳で見つめた。
続きが気になる方は是非ブックマークをお願いします!




