第60話:圧倒の理
明鏡館の快進撃が始まった。
真正面から攻め抜く。その淀みのない剣道に、Dリーグの中堅クラスではもはや歯が立たない。
対峙した瞬間に『先』を取られ、崩れたところを瞬時に打ち抜かれる。
「……ふぅ。よし、次」
面を外し、気合の入った顔で戻ってきた瞬に、守屋が微笑みながら話しかける。
「自信を持って攻めているのがわかるよ。相手が萎縮しているね」
「崩れる相手って、こんなにやりやすいんだな……」
瞬は、合宿で対峙した父・裕一の構えを思い出していた。あの不動の構えに比べれば、目の前の相手は紙細工のように脆く見える。
「一眼二足三胆四力。三は胆力、つまり度胸です。合宿を経て揺るぎない自信がついたからこそ、皆さんの攻めが『本物』になってきたんですよ」
佐伯が眼鏡をクイと押し上げ、論理的に分析する。
「要するに、身体が覚えてるってことね」
凛もまた、自分の勝利を噛み締めるように自信ありげに言った。
「へっ、負ける気がしねぇな」
大吾が不敵に笑う。その剥き出しの闘争心は、師である康介に驚くほど似ていた。
その圧倒的な試合内容は、隣のコート、さらにその先のコートへと、静かな波紋のように広がっていく。
「おい、あそこのDリーグ……何だあのチーム」
「明鏡館? 前に一番下から上がってきた、あの……」
ざわめき始める会場。
その視線の中に、Aリーグで悠然と出番を待つ「白い道着」の集団――虎皇館の影があった。




