第52話:絆の朝食、家族の防具
三日目、合宿最終日の朝。
調理室からは、大吾の母と佐伯の母が協力して作った、どこか懐かしい朝食の匂いが漂っていた。
「……納豆に焼鮭、生卵。一日を始めるに相応しい献立だ。母さんが考えたね」
佐伯が眼鏡を曇らせながら言うと、大吾の母が快活に笑った。
「よくわかったね! 私は手伝っただけだよ。ハッハッハ!」
「ゆっくりよく噛んで。集中力が上がるから」
優しく添える佐伯の母。二人の母親の献身に、大吾は「二日しか経ってないのに懐かしくて泣けてくるぜ」と涙ぐんでいた。
「親子って似るんだな。……俺は、どっちに似たんだろう」
瞬のふとした呟きに、全員の視線が一瞬だけ重なった。
(……絶対、遥さんだ)
全員が心の中で確信したが、誰も口には出さなかった。
「さあ、最後の稽古だ。準備しろ」
康介の指示に、全員が力強く頷く。
しかし、準備を終えて稽古場に足を踏み入れた瞬は、その光景に言葉を失った。
「……母さん。父さんまで!?」
そこには、剣道着に身を包んだ遥と、父・裕一の姿があった。
「俺が無理を言って頼んだんだ。親に、お前の今の剣道を見せてやれ」
康介の言葉に、父・裕一が静かに頷く。
「なかなかお前との時間を作ってやれないからな。こういう時くらい、力にならせてくれ」
父の言葉が、瞬の胸の奥に熱く響く。
「見て見て久しぶり! 似合うかしら」
くるくると回る遥の姿に、凛が笑いながら駆け寄る。
家族の愛と、三日間の地獄で得た「理」。その全てをぶつける、最後の稽古が始まろうとしていた。




