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第46話:生姜焼きと宿命

 調理室から、香ばしい匂いが漂ってきた。

「……肉だ偏。肉の匂いがする」

 大吾が調理室へと這い出てきた。

「もう少しだから大人しくしてなさい」

 遥が、杉森の母親と二人で手際よく料理を仕上げていく。

 風呂上がりの六人は、ゼンマイの切れかけた玩具のように膝を震わせ、畳に座るのにも一苦労していた。杉森は完全に電池が切れた顔で、「……僕、食べれないかも」と弱音を吐くが、守屋が「無理にでも食べないと明日が保たないよ」と諭す。

「はい、特製生姜焼きよ!」

 遥が運んできた山盛りの肉。香ばしい匂いに、六人は一斉に箸を動かした。

「……うまい」

 瞬の言葉に、全員が黙々と頷く。体調を慮った温かな食事が、疲弊した心身に染み渡っていく。

 不意に、大吾が肉を頬張ったまま尋ねた。

「……成瀬先生。大河内先生とは、昔から知り合いなんですか?」

 康介は箸を置くと、一つ溜息をついた。

「……大河内先輩は、俺たち後輩の憧れだった。強いだけじゃない。面倒見が良く、誰もが慕う天才だったよ」

 意外な言葉に、全員が驚く。

「どうして今は、あんなに冷たい目に……?」と凛。

「負けたのさ。期待を一身に背負い、誰もが全日本を疑わなかったが、土壇場で敗れた。……瞬、お前なら少しはわかるんじゃないのか?」

 瞬の動きが止まる。かつて、期待から逃げ出した自分の記憶。

「世間は残酷だ。手のひらを返したように見向きもしなくなる。……彼は、プライドが高すぎたんだろうな」

 静まりかえる一同。

「難しく考えなくていいわ。剣道で証明するだけよ」凛が言う。

「……捨てた石ころは原石だったと、言わせてやりますよ」

 守屋が静かに、しかし強く言った。虎皇館という「選別」の場から溢れた彼だからこそ吐ける、重い言葉だった。

「よし、やろう!」

 瞬が大河内を、少しだけ近くに感じた瞬間だった。

 

 そんな決意の渦中、杉森だけは震える手で茶碗を差し出していた。

「……おかわり」

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