第41話:宣戦布告
師範室の空気は、石のように重かった。
体格の大きな大吾が、借りてきた猫のように肩を丸めて縮こまっている。他のメンバーも息を潜める中、康介が静かに口を開いた。
「お前達、剣道は好きか?」
あまりに唐突な問いに、大吾は面食らいながらも即座に答えた。
「……好きっす」
「好き……かな」
少し照れくさそうに、凛が続く。
守屋は、かつて自分がいた虎皇館の風景を脳裏に浮かべながら、噛み締めるように言った。
「俺は……ここに来て、やっぱり剣道が好きなんだって、改めて思いました」
「私は、毎日データをまとめて次に何をすべきか分析しています。それが『好き』という感情なんだと定義できます」
佐伯の理詰めの言葉に、瞬が反応した。
「俺も……あんなに嫌だったのに、今は剣道のことばっかり考えてる。楽しいです」
康介は全員の言葉を一つひとつ飲み込むように沈黙し、やがて不敵に目を細めた。
「そうか。……なら、そろそろ目標を立てないとな」
「大会に、出るんですね」
佐伯がメガネを押し上げる。
「ああ。毎年2月に開催される、大きな大会だ」
康介の宣告に、守屋の顔から血の気が引いた。
「まさか……それって……」
「『虎皇旗争奪剣道錬成大会』だ」
静寂が走った。守屋が震える声で補足する。
「あの大会は……全国から強豪が集まり、文字通り鎬を削る場所だ。主催の虎皇館ですら、優勝するのは至難の業だと言われているのに……」
「虎皇館が道場の威信をかけて開催する大会だ」
康介の瞳に、勝負師としての鋭い光が宿る。
「そこに、乗り込むぞ」
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