表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/29

第25話:帰路

 長い一日の練習試合が終わり、明鏡館めいきょうかんは会場に確かにその足跡を刻みつけた。

 夕闇が迫る中、揺れるワゴン車。車内には、使い込まれた防具の匂いと、心地よい静寂が満ちていた。

「――みんな、よく頑張ったな」

 康介こうすけの穏やかな声が、後部座席に届く。

「私も、久しぶりに興奮しちゃった!」

 助手席ではるかがはしゃぎ、大吾だいごが力強く拳を握った。

「俺は、もっとやりたかったっす。全然足りねぇ」

「……課題も見つかりました。あの『待ち』に対する解法を、もう少し煮詰める必要があります」

 佐伯さえきが眼鏡を押し上げれば、りんも小さく溜息をついた。

「私も、決め手が足りない。……悔しいな、やっぱり」

 そんな仲間の会話を横目に、しゅんは一人、窓の外を流れる夜景を見つめ、沈黙を守っていた。

「瞬」

 康介がバックミラー越しに目を向ける。

「負けたことは悪いことじゃない。相手が、自分の弱点を教えてくれたんだ。……感謝しておけ」

「……感謝?」

 その言葉を聞いた瞬間、瞬の脳裏に、かつての老師の枯れた声が蘇った。

 ――『打って反省、打たれて感謝じゃ』

 あの時は、何を言っているのかさっぱり分からなかった。ただ、負けたことが悔しくて堪らなかった。だが、今日味わった悔しさと、そこから守屋や佐伯が繋いでくれた勝利。

(今なら、少しだけ分かる気がする……)

「それから、一人で抱え込むな。誰かが負けても、他の誰かがカバーする。それがチームだ」

 康介の言葉を引き継ぐように、守屋もりやが微笑んだ。

「絶対、良いチームになりますよ。だって……今日は、最高に楽しかったですから」

「ああ、俺も面白かったぜ!」

「大吾はいつも楽しそうでいいわね」

 凛の呆れた声に、車内に笑い声が広がる。

「まずは今日できなかったことの強化だ。これを繰り返せば、確実に強くなる。やるぞ」

「はい!」

 六人の返事が重なった。……が、凛がすぐに眉をひそめて助手席を振り返る。

「ちょっと、なんで遥さんまで返事してるのよ」

「あら、ごめんなさい。……昔のクセって、なかなか抜けないものなのね」

 遥の茶目っ気たっぷりな言葉を、夜風がさらっていく。

 それぞれの胸に、次なる壁を越えるための小さな火が灯っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ