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第22話:逃げ水の残像

 次鋒、りんの出番。

 しゅんが初黒星を喫した重い空気の中、凛は礼をして前に出る。

(相手の先鋒は確かに上手かった。……けど、次鋒まであのレベルが揃っているとは思えないわ)

 

「はじめ!」

 審判の声とともに、凛は愕然とした。目の前の相手は、先鋒と全く同じ、右に剣先を開いた拒絶の構えを取ったからだ。

(……徹底してる。なら、懐深く入るまでよ)

 凛は鋭く踏み込み、相手の懐で小手を触りに行く。だが、その一撃は乾いた音を立てて弾かれた。

(防がれた!?)

 相手は凛の竹刀が触れた瞬間、腕を大きく回して返し面を放つ。だが、凛は瞬とは違い、打ち切らずに「様子見」の打突に留めていた。即座に反応し、面を防御する。

(……返しは、先鋒ほど鋭くない。なら、崩せる!)

 再び構え合う二人。

(でも、今の角度で防がれるなら、真横から打つしかないじゃない)

 凛は得意の足さばきを解禁した。右へ、左へ。蝶のように舞い、間合いに入ると見せかけては退く。幻惑するようなステップに、相手の剣先が微かに揺らいだ。

 

(迷ったわね。今よ!)

 凛が重心を落とし、決定的な一撃を放とうと踏み込んだ。

 しかし、相手は凛の打突が届く直前、大きくバックステップを踏んだ。空を切る竹刀。

(届かない……!?)

 打つべき標的は、既に間合いの外に消えていた。

「さらに足を使って逃げますか」

 控え席で、佐伯さえきが冷めた声で呟く。

「先鋒が勝ったからな。確実な引き分け狙い……、最悪の逃げ切りだ」

 大吾だいごが苦々しく吐き捨てた。瞬は膝に置いた拳を白くなるほど握りしめ、その光景を凝視していた。

 その後も凛は猛攻を仕掛けるが、相手は一切の勝負を避け、円を描くように逃げ続ける。

「――引き分け!」

 審判の宣告が響く。凛は面を外し、乱れた息を整えながら相手を睨みつけた。

「仕留めきれなかった……」

 自分たちの勢いが、心影会の冷徹な「計算」によって、じわじわと削り取られていく。

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