第19話:待ちの壁
Dリーグ。ついに、中堅クラスの厚い壁が立ちはだかる場所まで来た。
試合場の入り口で、守屋が一点を見つめて足を止めた。
「……『心影会』がいるな」
「有名なのか?」
瞬の問いに、守屋は険しい表情を崩さず頷いた。
「たまに、上位リーグに食い込むこともある実力派だ。……とにかく、やりにくい」
「強いのか強くないのか、どっちだよ」
大吾が竹刀袋を担ぎ直して笑うが、守屋の目は笑っていなかった。
「守りに特化したチームだ。常に待ち、こちらが痺れを切らして打ったところを返してくる。迂闊に飛び込めば、そこを餌食にされるぞ」
佐伯が眼鏡を押し上げ、冷徹に分析を上書きした。
「勝つための剣ではなく、『負けないための剣風』。……合理的ですが、対峙する側には最悪の相手ですね」
「やな感じだな。……まあ、俺はさっさと取りに行くだけだ」
瞬が竹刀を握る手に力を込めるが、凛がその背中に冷や水を浴びせる。
「だから、取りに行ったら返されるって言ってるの。少しは頭を使いなさい」
「瞬には、まだ高度な注文ですね」
「んだと佐伯! 見てろよ、俺がぶち抜いてやる!」
「冷静にね、瞬……」
守屋の制止も、今の瞬には届かない。
虎皇館への恐怖を「交剣知愛」で塗り替えた今の瞬は、良くも悪くも高揚していた。
その高揚が、心影会の「待ちの壁」を前にした時、命取りとなる焦りに変わることを、まだ彼は知らなかった。




