表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/23

第15話:不気味な均衡


 Gリーグの全試合を圧倒し、明鏡館のしゅん大吾だいご守屋もりやの三人は通路を歩いていた。

「次のリーグまで時間あるから、他の試合見に行こうぜ」

 大吾が意気揚々と進むその背中に、周囲の視線が突き刺さる。「Gリーグに規格外のチームがいる」という噂は、既に会場を駆け巡り始めていた。

 だが、ある一点を境に、周囲のざわめきが急速に引いていった。

 通路の向こうから白い集団、王者・虎皇館こおうかんが歩いてくる。

 中央を歩く主将・鷹司たかつかさの放つ空気は、周囲を威圧するというより、寄せ付けない拒絶に近いものだった。

 明鏡館の前で、その足が止まった。

「……っ!」

 守屋の肩が、不自然に強張る。

 虎皇館の副主将・大月が、怪訝な顔で口を開く。

「守屋か……。そんな所で何をしている」

 鷹司がわずかな手つきでそれを制した。彼は守屋に視線を向けることもなく、淡々と事実だけを告げた。

「……守屋。先生が、芳名板ほうめいばんからお前の名前を消した。お前はもう、俺たちの関わる存在じゃない」

 守屋が、悔しさに唇を噛みしめる。

「……なんだと!?」

 瞬が思わず一歩、前に出た。

 その瞬間、鷹司の視線が初めて、真っ向から瞬を射抜いた。

 瞬の心臓が、跳ねるように脈打つ。

(……この目だ)

あの日、あまりにも圧倒的な実力に恐れ、不様な敗北を晒した時に浴びた冷たい視線。

 一瞬、膝が折れそうになる。足の裏が地面から離れてしまうような、嫌な浮遊感が瞬を襲う。

 だが、瞬は逃げなかった。ガタつく膝を無理やり固定するように、床を強く踏みしめる。

 

 かつての恐怖が波のように押し寄せるが、それを今の自分のプライドが必死に押し返していた。睨み返そうとするが、相手の圧倒的な落ち着きを前に、自分の呼吸だけが荒くなっていくのがわかる。

 その沈黙を、大吾の分厚い掌が叩き割った。

 瞬の肩をグイと引き寄せ、大吾が不敵に笑う。

「行き着く先は同じだ。せいぜいそこで待ってろ」

 鷹司の顔には、微かな嘲笑さえ浮かばなかった。

 彼は瞬を「ライバル」としてではなく、ただの「道端の石」でも見るかのように視線を外し、再び歩き出した。

「身の程を知れ」

 吐き捨てられた言葉に、瞬は奥歯が鳴るほど強く噛み締めた。

 鷹司たちが去った後、瞬の手のひらには、自分でも驚くほどの汗が滲んでいた。

 だが、あの日と違うのは、その震えが「逃げたい恐怖」ではなく、「届かない悔しさ」から来るものだということだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ