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第138話:繋がる意志、冷徹なる刺客

観客席では、遥が裕一の手を強く握りしめ、溢れる涙を拭おうともしなかった。

「……瞬が……やったよ。あの瞬が……ついに……っ」

それは、絶望の底から這い上がり、泥を啜ってでも前に進み続けた息子が掴み取った、魂の勝利。

そして、多くの縁に支えられ、導かれてここに立っていることへの、震えるような感謝だった。

「ああ。……だが、終わりじゃない。戦いはここからだ」

裕一は遥の手を優しく握り返すと、その眼差しを再び、熱気の渦巻く試合場へと戻した。

虎皇館の陣営には、凍り付くような衝撃が走っていた。

「藤田が……負けただと? 鷹司に次ぐ実力者が……!」

驚愕に顔を歪ませる大河内が、次鋒の樋口を射抜くような目で見据える。

「奴らを勢いに乗せるな! 叩き潰せ、二本取り返してこい!」

「はい」

樋口の返事に、揺らぎは一切なかった。

(先鋒が勝とうが負けようが、俺には関係ない。……俺は、ただ俺の仕事をするだけだ)

先鋒が惨敗した直後とは思えない。

いつもと変わらぬ冷徹な足取りで、樋口は試合場へと歩を進める。

試合を終えた瞬が引き上げてくる。

これから戦地へ向かう凛と、すれ違う一瞬。

二人は、言葉を交わさなかった。

ただ、互いの瞳の奥にある熱を確かめるように、深く、小さく頷き合う。

交わした視線の中に、言葉など不要だった。

そこには、魂を預け合える者たちにしか存在しない、確かな「信頼」が宿っていた。

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