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第135話:心の亀裂、閃光の残像
藤田の身体が、爆発した。
並の剣士では到底届かないはずの間合いから、弓のようにしなった背筋が一気に解放される。
全身のバネを乗せた、超長距離からの『面』。
だが、瞬が本能的に下がったわずか数センチが、命運を分けた。
藤田の竹刀は空を切り、勢いのまま二人は鍔迫り合いへと密着する。
(見えなかった……。遠間ですら、この速さなのか……!)
驚愕に目を見開く瞬に対し、藤田は密着した距離で不敵に口角を上げた。
(運よく躱したか。……だが、次はないぞ)
分かれ際。
瞬は恐怖を打ち消すように、決意を固めた。
(遠間は危険だ。……攻める。俺の剣道で、こいつを崩すんだ!)
瞬は自らの矜持である『攻め』を起点に、一気に間合いを詰めた。
「――近間の打ち合いは、俺の専門なんだよ!」
藤田の斬撃が、視界を焼き切る閃光となって飛ぶ。
瞬も必死に竹刀を振るい、連続打突で応戦するが――
藤田の速度はそれを遥かに凌駕していた。
瞬が次の技へ繋げようとしたその刹那。
残像すら置き去りにした藤田の竹刀が、瞬の脳天を正確に射抜いた。
「面あり!」
審判の赤旗が、三本同時に突き上がる。
――ついていけない。
信じてきた『攻め』も、積み重ねてきた『経験』も、すべてが届かない。
瞬の心に、鋭く、冷たい亀裂が走った。




