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第131話:師の背中、決勝の足音

「負けた……か。二度目の対戦、今度こそ雪辱を果たすつもりでおったんじゃがな……」

観覧席の隅で、宇佐美が絞り出すように呟いた。

「かける言葉が見つかりません……本当に、残念です」

隣で戦況を見守っていた裕一が、沈痛な面持ちで答える。

わしくらい長く剣道をやっておると、教え子が負ける姿など星の数ほど見てきた。長い剣道人生から見れば、今日の負けなど『ああ、そんなこともあったな』程度の小石のようなもんじゃ。……だがの……」

宇佐美は、試合場を去る加賀谷たちの背中をじっと見つめた。

「あの子らのあの悔しそうな顔を見ると、『今』寄り添ってやらねば、壊れてしまいそうでな。よく頑張ったと、褒めてやらねば……」

その言葉に、裕一は驚いたように隣の老剣士を見た。

「丸くなられましたね、先生。……でも、加賀谷君は『前』での勝負には負けていませんでした。あの鷹司に、引き技を打たせるまで追い詰めたんですから」

「丸くなったのではない。儂もまだ、指導の勉強中なんじゃよ」

宇佐美はそう言って、少しだけ、柔らかな笑みを浮かべた。

その時、会場にスピーカーからの放送が鳴り響く。

『――決勝戦は、10分間の休憩の後に行います』

冷徹なアナウンスが、準決勝の熱い余韻をかき消し、最後の一戦へと会場の空気を一瞬で塗り替えていく。

泣いても笑っても、あと10分。

頂点を決める最後の戦いが、すぐそこまで迫っていた。

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