第129話:激突の果て
鷹司の打突の鋭さに、仁明館サイドに戦慄が走る。
「なんで……勝ったと思ったのに……」
中村茜が、信じられないものを見たように呟いた。
自分たちが信じてきた正道の剣道が、根底から崩れ落ちていく。
しかし、加賀谷だけは、自分がなぜ今「生きている」のかを理解していた。
師・宇佐美から受け継がれた教え。
(中心を取っていたから、助かったんだ……)
背中を冷たい汗が伝う。
一瞬でも慢心し、構えが崩れていれば、今頃は終わっていた。
(前回より強くなっている……この男に、二度と竹刀を振らせてはダメだ!)
加賀谷は腹を括った。
『攻撃こそ、最大の防御』。
前回大会の覇者・大和をすら沈めた、加賀谷の怒涛の猛攻が幕を開ける。
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爆発的な足捌きを支える下半身。微動だにしない上半身。
その強固な「土台」から、大砲のような打突が次々と発射される。
すべてが渾身、すべてが捨て身。
鷹司の速さに匹敵するスピードで繰り出される連撃に、会場中が息を呑んだ。
あの鷹司が、応じ技を出す隙すら見いだせない。
加賀谷の決死の咆哮は、観客の心にまで突き刺さっていく。
ついに――加賀谷が全霊を込めた面を放つ。
鷹司はそれを面布団ギリギリで受け止め、両者の身体が激しく接触した。
――その瞬間だった。
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鷹司の両手が加賀谷の体を突き上げ、鋭く身を翻し反転する。
打突の勢いと体当たりの慣性が、加賀谷の体勢を無残に引き延ばした。
そのわずかな隙を、鷹司の竹刀が横一閃に切り裂く。
――パァーーン!!!
流れるような体捌きで、二人の距離が離れる。
「胴あり!」
審判の宣告が響く。
鷹司の放った残酷なまでに美しい残心が、仁明館が紡いできた『絆』を、無情にも切り裂いた。




