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第122話:沈黙の支配

後がない蒼龍館そうりゅうかんにとって、命運を分ける中堅戦。

白線に立った蒼龍館の中堅は、持てる気迫のすべてを剣先に込めていた。

わずかな隙を誘い出そうと、竹刀を小刻みに震わせ、鋭い「攻め」を幾度も繰り出す。

しかし、対峙する佐伯さえきは、微動だにしない。

ただ静かに構えを維持し、自分の剣先を正中線から外さなかった。

蒼龍館の中堅が激しく動くほど、佐伯の静寂が重くのしかかる。

(攻めているはずなのに……)

焦れば焦るほど、出口のない袋小路に引きずり込まれていくような感覚に陥る。

(さぁ、打って来い……)

---

佐伯が、静かに一歩踏み出した。

すり足で、吸い付くように間合いを詰めていく。

派手な動きは何一つない。

だが、その剣先は寸分の狂いもなく相手の喉元を捉え続け、一切の私心を許さなかった。

蒼龍館の中堅は、じわじわと間合いを潰される圧力に、思わず息を止める。

打とうとすれば、その瞬間に合わされる。

根拠のない、しかし確信に近い予感だけが、試合場の沈黙を支配していた。

「一本いるんだぞ!」

蒼龍館の控え席から、悲痛な叫びにも似た声が飛ぶ。

その声に背中を押されるように、蒼龍館の中堅が居ても立ってもいられず、半ば自暴自棄に手元を上げた。

その瞬間――佐伯の竹刀は、すでに最短距離を抜けていた。

――パァン。

乾いた音が響くと同時に、審判の白旗が瞬時に三本上がる。

「面あり!」

それは、打つ前から決まっていた一本だった。

無理に打って出れば、そこを捉えられる。

審判もまた、その理合りあいが完成する瞬間を、確信を持って見守っていた。

---

「風格……。まさか、中学生の試合でこれほどのものを感じるとはな」

蒼龍館の監督は戦慄を覚えると同時に、並大抵の努力では到達し得ない領域に足を踏み入れようとする佐伯に、深い感銘を抱いていた。

中堅戦、明鏡館・佐伯。

時間内に相手を完全に封じ込め、一本勝ち。

佐伯が、明鏡館の決勝進出を決めた。

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