第120話:牙を剥く
第二試合場。
蒼龍館対明鏡館。
次鋒の二人は、試合場の隅々まで使い、火花を散らすような激しい間合いの取り合いを繰り広げていた。
(先鋒が勝ったからといって、逃げ切れると思うなよ!)
蒼龍館の次鋒は、足の指先に力を込める。
凛の得意とする変幻自在な足さばきを、さらに上回る速度で追い詰めていく。
(出頭は諦めて、力勝負に来たわね……)
凛はついに、試合場の角を背に負った。
(もう逃げ場は無いぞ。ここで仕留めてやる!)
蒼龍館の次鋒が、鋭い踏み込みを見せる。
鋭い『面』と見せかけ、相手の防御を誘ってから放つ、練り上げられた『小手』へのフェイント。
---
追い詰められた凛は、守りに転じるかに思われた。
しかし、その刹那――凛の体が前方に弾けた。
相手がフェイントの動作に入った瞬間の、一切の迷いを断ち切った最短距離の『面』。
――スパァーーン!!!
「面あり!」
審判の三本の白旗が、鮮やかに冬の陽光を裂いた。
(なんだと!? 逃げていたんじゃ……なかったのか……!)
蒼龍館の次鋒は、凛の実力を見誤っていた。
追い詰め、捉えようとした直後、守勢に回っていたはずの獲物が最強の牙を剥いたのだ。
(素早い足さばきだけじゃない。今の凛は、真正面から打ち抜く強さを持っている。死角はないな)
ここ数ヶ月、凛は自分の小さな身体で、大男たちを相手に真っ向からぶつかる稽古を繰り返してきた。
その血の滲むような積み重ねを誰よりも知っているからこそ、康介は胸を熱くした。
---
蒼龍館の次鋒は、焦りからフェイントを繰り返すが、正面から堂々と勝負を挑んでくる凛の気迫に、ついに心が屈した。
「面あり!」
「勝負あり!」
次鋒戦、凛。
圧巻の二本勝ち。




