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第115話:嵐の前の静寂

「始まった……」

第一試合場を見つめ、りんが震える声で呟いた。

仁明館じんめいかんの実力を疑っているわけではない。

だが、目の前で繰り広げられる虎皇館こおうかんの攻めは、あまりに苛烈だった。

圧倒的な力の前に、戦友たちが無残に傷ついてしまわないか。凛はただ、それが怖かった。

「お前たちは試合が終わったばかりだ。水分を摂って落ち着け」

康介こうすけの指示に従い、五人は呼吸を整えながら隣の試合場を凝視する。

そこには、虎皇館の先鋒・藤田ふじたが、獲物を切り刻むような剣識で仁明館を追い詰める姿があった。

「速い……! なんてスピードだ」

しゅんが目を見張る。

だが、守屋もりやがその視線を遮るように言った。

「瞬、今は自分の事に集中しろ。蒼龍館そうりゅうかんは半端な相手じゃない」

「……あぁ、わかってる」

瞬は深く息を吐き、意識を内側へと向けた。

明鏡館が、最後の円陣を組む。

「蒼龍館は、大将が要だ。理想は大将までに勝負を決めることだ」

守屋が低い声で戦略を伝える。

「俺が負ける前提か?」

大吾だいごが眉をひそめるが、守屋は首を振った。

「そうじゃない。リスクを最小限にするんだ。今まで通りでいい。先鋒から全力で取りに行け!」

「そうこなくっちゃ」

瞬の瞳に、再び鋭い光が宿る。

「ごちゃごちゃ考えるのは性に合わねぇ。全部倒せばいいんだろ」

大吾が竹刀を強く握りしめた。

佐伯さえきが眼鏡を押し上げ、冷静に補足する。

「戦略も必要ですが……まずは先鋒から確実に流れを引き込みましょう」

「相手の特徴は?」

凛の問いに、守屋が短く答えた。

「奴等の強さは、前で勝負をして来るところだ。徹底的に『出頭でがしら』を狙ってくる。それと、つば迫り合いになった瞬間は、必ず引き技が来ると思え」

守屋の鋭い眼光が全員を射抜く。

「……崩されるなよ。気を抜く間はないぞ」

全員が、その言葉を重く受け止め、静かに頷いた。

---

一方、対峙する蒼龍館サイド。

「守屋がいるな……。厄介だ」

副将が苦々しく吐き捨てる。

暁武ぎょうぶが上がってくると思ってたからノーマークだったぜ」

次鋒が同意するように言ったが、中堅は冷静に戦況を見据えていた。

「さっきの試合を見たが、あの大将はヤバいな。……前三つで決めよう」

「大将戦になっても問題ねぇよ」

大将が不敵に笑う。

「とにかく、始まった瞬間から呑み込むぞ。行くぞ!」

「「「おう!!!」」」

---

第二試合場。

Cブロックの勝者と、Dブロックの覇者。

二つの咆哮が重なり、準決勝の幕が上がろうとしていた。

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