第114話:二つの矜持
第一試合場。
赤・仁明館道場 対 白・虎皇館道場。
両チームが円陣を組む。
しかし、その空気はあまりに対照的だった。
「仁明館か……。気を引き締めていくぞ」
副主将である中堅の大月が、沈痛な面持ちで場を引き締めようとする。
「問題ねぇよ。あの先鋒が俺のスピードについて来られねえのは分かってるだろ」
緊張感のかけらもない先鋒・藤田が、ニヤニヤと薄笑いを浮かべた。
「藤田……。あいつらの実力は本物だ。油断していると――」
「俺に指図するなら、俺に勝ってから言えよ」
藤田は大月の言葉を遮り、小馬鹿にしたように鼻で笑った。
「俺は強い奴の言うことしか聞かねぇ。なぁ、鷹司?」
話を振られた大将の鷹司は、藤田と目も合わせず、ただ一点を見つめている。
「……いつも通りだ。問題ない」
次鋒の樋口も周囲と関わる気はないようで、ただ静かに竹刀を点検している。
「ちっ、勝手な奴ばかりだな……」
副将の加治屋が吐き捨てる。
そこへ、ゆったりとした歩調で大河内が戻ってきた。
――その瞬間、虎皇館の五人が凍りついた。
言葉はなく、ただ飼い犬のように大河内の顔色を伺い、呼吸を整える。
「お前たちのするべきことは、ただ一つだ。――勝て」
「「「はい!」」」
大河内の冷徹な号令に、五人の声が重なった。
その瞳には、もはや私情はなく、勝負を完遂するための殺気だけが宿っていた。
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一方、対峙する仁明館サイド。
前回の虎皇館との対戦は、先鋒が一本負けをして、残りは全て引き分けだった。
「まずは、あの先鋒を抑えないとな」
大将・加賀谷の言葉に、先鋒が力強く頷く。
「あぁ……何度もやられてたまるか。今度は、必ず抑えてみせる」
「大将まで繋ぐから……頼むよ!」
次鋒・中村の言葉に、加賀谷が拳を握って応えた。
「任せとけ」
仁明館にとって、加賀谷は絶対的な大将だった。
彼まで繋げば、決して負けはない。
虎皇館の鷹司と互角の勝負をし、厳武館の大和を下した加賀谷への信頼が、彼らの心の支えだった。
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「相互に、礼!」
審判の声が響く。
第一試合場で、AブロックとBブロックの準決勝が始まろうとしていた。




