第112話:巨大な壁
暁武剣士会は、焦っていた。
東の横綱・叢雲を倒したことで、明鏡館はこのDブロックの空気を完全に自分たちの物にしていた。
「ここまで来て……負けてたまるか!」
暁武の先鋒が奥歯を噛み締め、鋭い視線で瞬を睨む。
だが、彼らはすでに理解していた。
シードである自分たちが格上なのではない。
自分たちの行く手に、明鏡館という巨大な壁が立ちはだかっているのだと。
「始め!」
審判の号令と同時に、瞬の鋭い踏み込みが床を鳴らした。
その勢いに呑まれ、暁武の先鋒が思わず後退する。
(なんなんだ、この気迫は……。なんでこんな奴が無名なんだよ!)
得体の知れない瞬の剣に、暁武は戦慄した。
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しかし、暁武もまた強豪としての意地を見せる。
瞬に先取を許しながらも、次鋒戦では凛の軽快な足さばきを執拗に封じ、中堅戦では佐伯の剣先を徹底して警戒する。
そして副将戦――。
守屋の老獪な攻めに対しても、暁武は泥臭く食らいつき、試合を引き分けに持ち込んだ。
「頼むぞ、二本……二本いるんだ!」
繋がれた想いを背負い、暁武の大将が立ち上がる。
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大将戦。後のない暁武の猛攻が始まった。
仲間たちが必死に繋いでくれた一縷の望みを胸に、死に物狂いで大吾に肉薄する。
「ウォリャァァーーッ!」
裂帛の気合とともに放たれた、魂の飛び込み面。
だが、その瞬間。
大吾の竹刀が、最短距離で脳天を真っ二つに裂く軌道を描いた。
――相面。
真っ向勝負でトドメを刺された暁武の面々は、ただ呆然と天井を見上げた。
常に「上の立場」にいた強豪が、初めて自分たちの無力さを知った瞬間だった。
審判の旗が、力強く明鏡館側に上がる。
「勝負あり!」
明鏡館はDブロックを突破して、ついに四強(ベスト4)入りを果たした。




