第111話:託された誇り、龍の再起
瞬が放つ爆発的な突破力を導火線として。
二回戦、三回戦と、明鏡館の快進撃は続いていた。
(俺が……このチームを引っ張るんだ……!)
三回戦を終え、会場の隅で肩を激しく上下させる瞬に、凛が駆け寄る。
「はぁ……はぁ……瞬、大丈夫? 無理しすぎてない?」
問いかける凛自身も、肩で息をしていた。
瞬だけでなく、佐伯、守屋、そして体力自慢の大吾ですら、隠しきれない疲労を顔に滲ませている。
「これが、虎皇旗の恐ろしさだ……」
守屋が、防具の重みに耐えるように呟いた。
「全国の強豪しかいないこの大会……一試合ごとに、体力と精神を根こそぎ持っていかれる」
「……だが、このために俺たちはあの厳しい稽古をしてきたんだ」
守屋が自分に言い聞かせるように続けると、その瞳に再び鋭い火が灯った。
「まだまだ動けるぜ……!」
大吾が竹刀を握り直す。
「あなたのような体力自慢とは違いますが……あの合宿のおかげですね」
佐伯が眼鏡を押し上げ、不敵な強がりを口にした。
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そこへ、背後から静かな声が掛かる。
「流石は明鏡館ですね。その気迫がなければ、このトーナメントを勝ち上がれない……」
不自然なほど近くに、虎皇館の係員腕章を巻いた影が立っていた。
「新免……!? こんな場所で……!」
守屋が周囲を分厚く警戒し、声を潜める。
虎皇館の門下生が他校の選手と接触することが、どれほどの重罪かを知っているからだ。
「……あなたたちを見ていると、自分の世界がいかに狭かったかがよく分かりました」
新免は、真っ直ぐに守屋を見つめた。
「守屋さん……あなたは『逃げた』んじゃない。『前へ進んだ』んですね」
その言葉に、守屋の目が見開かれる。
「……どうか勝ってください。応援しています」
新免はそれだけ言い残すと、雑踏に紛れて去っていった。
その背中には、組織の呪縛から解き放たれ、何かを確信したような清々しい決意が宿っていた。
「新免……」
かつての後輩からの「赦し」とも取れる言葉に、守屋の胸に熱いものが込み上げる。
「新免……その想い、背負ってやるよ」
瞬の瞳に、再び鋭い光が宿った。
そのやり取りを黙って見守っていた康介が、一段と低い声で号令を掛ける。
「ここからは気力の勝負だ。……行くぞ!」
「「「「「はい!!!」」」」」
五人の声が、一つに重なった。
いよいよDブロック決勝――。
暁武剣士会との試合が、幕を開ける。




