第110話:捕食者の群れ、龍の祈り
全国各地から集った名だたる強豪たちが、一回戦で次々と姿を消していく。
「……俺たちが……一回戦で負けるなんて……」
呆然と立ち尽くす敗者たち。
実績や名声すらも飲み込んでいく「捕食者」たちが会場に溢れ、異様な熱気が渦巻いていた。
「今日は乗ってるな、瞬!」
勝利の余韻が残る明鏡館の陣。大吾が瞬の肩を力強く叩いた。
「……今日やらなくて、いつやるんだよ!」
瞬の顔はかつてないほど引き締まっていた。その瞳は、浮ついた喜びではなく、勝負師の光を宿している。
「仁明館はどうなった?」
瞬の問いに、五人の視線が遠く離れた第一試合場へと向けられた。
*
注目の一戦。前年度覇者・厳武館と仁明館の激突は、すでに佳境を迎えていた。
「……あれは、もう副将ですね。すぐに大将が出ますよ」
佐伯が眼鏡の奥の瞳を凝らし、戦況を見極める。
第一試合場の傍らには、すでに面を外した中堅の横で、静かに精神を研ぎ澄ませる加賀谷が立っていた。
「わたし、ちょっと掲示板見てくる!」
凛が弾かれたように走り出す。
「おい、俺たちも次が始まるんだぞ。早く戻れよ!」
遠ざかる凛の背中に、守屋が声を張り上げた。
(スコアはどうなっている……まさか、あの仁明館が負けているんじゃないだろうな)
瞬が焦燥に駆られたその時、凛が肩で息をしながら戻ってきた。
「先鋒は取られたみたいだけど、茜ちゃんが勝ってる! 大将戦よ!」
凛の緊迫した声に、明鏡館の空気が凍りつく。
視線の先では、今まさに加賀谷と、前回優勝校の大将・大和が、立礼の位置へと動き出していた。
「ちくしょう、気になるけど……」
瞬が悔しげに呟く。
「私達の二回戦も始まりますよ。瞬、準備を」
佐伯の促しに、瞬がゆっくりと頷き、面を手に取った。
「今は、自分たちの試合に集中しよう」
守屋の言葉に、全員が深く、力強く頷いた。
(決勝で会うって約束したもんね。信じてるよ、茜ちゃん)
凛の瞳が、次の対戦相手を射抜くような鋭さを帯びる。
遠い第一試合場の地鳴りのような歓声を背に、明鏡館の五人は再び、自分たちの戦場へと足を踏み出した。




