第108話:仕組まれた死闘
掲示されたトーナメント表を確認した瞬間、明鏡館の五人は絶句した。
Aブロック第一シード。
そこには前年度優勝校**『厳武館』の名があり、あろうことかそのすぐ隣の枠に『仁明館』**の文字が刻まれていたのだ。
「大河内の小僧……やってくれたな」
観客席でパンフレットを握り締める宇佐美の拳が、みしりと音を立てた。
「潰し合いだ……」
守屋が青ざめた顔で呟く。
「厳武館と仁明館。どちらが勝っても、優勝候補の片方がここで消える。あまりに露骨な配置だ」
佐伯の冷静な分析に、隣にいた加賀谷が静かに、だが力強く答えた。
「ウチは去年出場していないけぇな、ノーシード扱いは妥当じゃ。二回戦で当たろうが決勝で当たろうが、倒すことに変わりはない。……それだけのことじゃろ?」
その泰然自若とした態度に、瞬たちの背筋が伸びる。
「茜ちゃん、頑張ってね」
凛の言葉に、中村は柔らかな笑みを浮かべて頷いた。
「うん。……うちらはAブロックを勝ち上がる。明鏡館はDブロックじゃな。決勝で会おうや」
短い激励を交わし、仁明館のメンバーと別れる。
*
守屋が再び、トーナメント表に目を落とした。
・Bブロックシード:本家**『虎皇館』**
・Cブロックシード:古豪**『蒼龍館』**
・Dブロックシード:『暁武剣士会』
そして、明鏡館のいるDブロック。
一回戦の相手は**『叢雲道場』**だ。
「……俺たちも、『当て馬』扱いってわけか」
守屋の自嘲気味な言葉を、康介の鋭い声が遮った。
「加賀谷が言った通りだ。どこで誰と当たろうが、我々のやるべきことは変わらん」
康介は五人の顔を一人ずつ見据えた。
そこには、戦場に赴く「剣士」の顔があった。
「行くぞ!」
康介の短い、だが魂を揺さぶるような号令。
「はい!」
五人の声が、地鳴りのように重なった。
無名の「当て馬」が、牙を剥いて虎の城を駆け上がる。
初陣、対・叢雲道場。その幕が今、切って落とされた。




