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第100話:最強の証明

 いつもの明鏡館に戻った五人を前に、康介が静かに口を開いた。

「加賀谷の強さの正体を、教えてやろう」

 遠征で完膚なきまでに叩きのめされた男の名に、五人の空気が引き締まる。

「それはな……『基本』だ」

「基本……?」

 意外な答えに、大吾や瞬が目を丸くする。派手な技や特殊な技術を予想していた彼らにとって、それはあまりに地味な回答だった。

 だが、佐伯だけは違った。眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせ、独り言のように呟く。

「僕も……そうではないかと分析していたところです。基本の形とは、遥か昔から数多の達人たちが命懸けで削ぎ落とし、磨き上げてきた『最適の動き』。それが現代まで受け継がれてきたのではないでしょうか」

「よくそこまで辿り着いたな。俺も同意見だ」

 康介が深く頷き、言葉を継ぐ。

「例えば『構え』を思い浮かべてみろ。『攻める』、『打つ』、『応じる』、『守る』。全ての動きに最適な状態が『基本の構え』なんだ」

「全てに……最適……」

 瞬が自分の構えを思い浮かべる。

「剣道における『最強』とは、トリッキーな技を繰り出すことじゃない。『いつ、いかなる状況でも、正しい姿勢と理合で基本を打ち切れること』。そのものなんだ」

 康介の言葉に、五人は自分の剣を振り返り、言葉を失った。

「加賀谷の動きは、その『基本』の極致にある。……あいつは、あの鷹司たかつかさと互角の勝負を演じたらしい」

「――っ!」

 道場に衝撃が走る。

 宿敵・鷹司。あの圧倒的な暴力に等しい強さと渡り合う少年が、自分たちのすぐ近くにいた。

「やるべきことは見えたはずだ。……今日から、やるぞ!」

「「「はいっ!!」」」

 五人の返事が、これまでにない熱量で道場に木霊した。

 康介もまた、自ら防具を身に纏った。

 師弟六人。一糸乱れぬ空気の中で、徹底的な、そして果てしない「基本」の繰り返しが始まった。

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