第7話 継承の仕組み ——迎える家
≪羽鳥陽子の語り / 如月澪採録≫
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羽鳥家について、よく誤解されることがある——「羽鳥家の血筋が、体質を受け継ぐ」という理解だ。
陽子はこれを否定する。
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「羽鳥家に生まれたから、音が聞こえるわけじゃない。
音が聞こえる者が、羽鳥家に来るの。
『音を通す者』は、どこにでも生まれる。
管楽器に引き寄せられる子、声の方向に敏感な子——
そういう子が、何かの縁でここに繋がってくる。
羽鳥家は、迎える家なの。閉じていない」
——羽鳥陽子(如月澪への談話)
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「間を歩く者」——境界に近い場所に生まれた体質——についても同じことが言えると陽子は言う。
この体質は、遺伝ではなく「縁」によって羽鳥家に引き寄せられる。
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「鏡の前で、自分が先に動く——そういう経験をした子が、いつかここへ来る。
来た時に、羽鳥家は『なぜそうなのか』を教えることができる。
名前がなかったものに、名前を渡すことができる。
名前があれば——怖くなくなる。
全てではないけど、少しだけ」
——同上
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澪は京都出身だ。宮城出身の雫も、それぞれ別の場所で育った。
彼女たちが羽鳥家の「連枝」として鏡淵に来た経緯を、陽子はこう語る。
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「縁、としか言いようがない。
澪は子どもの頃から『音が来る』と言っていた。
雫は『誰かが危ない時に、体が先に動く』と言っていた。
どちらも、名前のなかった経験。
羽鳥家はその経験に、『音を通す者』と『在ることで守る者』という名前を渡した。
それだけ。迎えた——それだけのこと」
——羽鳥陽子
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> ★ 澪の付記
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> 陽子に「なぜ私を選んだのですか」と聞いたことがある。
> 陽子は少し間を置いて、こう言った——
> 「選んでいない。来たから、迎えた」
>
> その言い方が、一番正確だと今は思う。
> 羽鳥家は選ばない。迎える。
>
> ——「だんだん」という言葉を最初に教えてくれた時、
> 陽子はそういう顔をしていた。




