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鏡淵の調律 外伝 羽鳥家始源記  作者: ちとせ鶫


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第7話 継承の仕組み ——迎える家

≪羽鳥陽子の語り / 如月澪採録≫


     * * *


 羽鳥家について、よく誤解されることがある——「羽鳥家の血筋が、体質を受け継ぐ」という理解だ。

 陽子はこれを否定する。


     * * *


「羽鳥家に生まれたから、音が聞こえるわけじゃない。

音が聞こえる者が、羽鳥家に来るの。


『音を通す者』は、どこにでも生まれる。

管楽器に引き寄せられる子、声の方向に敏感な子——

そういう子が、何かの縁でここに繋がってくる。

羽鳥家は、迎える家なの。閉じていない」


——羽鳥陽子(如月澪への談話)


     * * *


 「あわいを歩く者」——境界に近い場所に生まれた体質——についても同じことが言えると陽子は言う。

 この体質は、遺伝ではなく「縁」によって羽鳥家に引き寄せられる。


     * * *


「鏡の前で、自分が先に動く——そういう経験をした子が、いつかここへ来る。

来た時に、羽鳥家は『なぜそうなのか』を教えることができる。

名前がなかったものに、名前を渡すことができる。


名前があれば——怖くなくなる。

全てではないけど、少しだけ」


——同上


     * * *


 澪は京都出身だ。宮城出身の雫も、それぞれ別の場所で育った。

 彼女たちが羽鳥家の「連枝」として鏡淵に来た経緯を、陽子はこう語る。


     * * *


「縁、としか言いようがない。

澪は子どもの頃から『音が来る』と言っていた。

雫は『誰かが危ない時に、体が先に動く』と言っていた。


どちらも、名前のなかった経験。

羽鳥家はその経験に、『音を通す者』と『在ることで守る者』という名前を渡した。

それだけ。迎えた——それだけのこと」


——羽鳥陽子


     * * *


> ★ 澪の付記

>

> 陽子に「なぜ私を選んだのですか」と聞いたことがある。

> 陽子は少し間を置いて、こう言った——

> 「選んでいない。来たから、迎えた」

>

> その言い方が、一番正確だと今は思う。

> 羽鳥家は選ばない。迎える。

>

> ——「だんだん」という言葉を最初に教えてくれた時、

> 陽子はそういう顔をしていた。

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