第4話 羽鳥家と御岳の断絶
≪羽鳥家文書庫 乙種第十二号 / 御岳側の記録は現存しない≫
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> ★ 文書情報
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> 所蔵:羽鳥家文書庫 乙種第十二号
> 成立:江戸中期(推定)
> 備考:御岳家側の記録は現存しない。本文書は羽鳥家側の視点のみで記される。
> 御岳家がどのような認識を持っていたかは、現時点では不明。
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羽鳥家は、かつて「御岳家」と呼ばれる家系と補完関係にあったとされる。
御岳家は「此岸の安定」を守る家系であり、羽鳥家は「境界の揺らぎ」を読む家系だ。
二つは本来、対をなすものだった。
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御岳家は言う——揺らぎは邪だ、と。
揺らがない世界こそが正しい、と。
此岸を完全に安定させれば、彼岸は必要なくなる、と。
羽鳥家は問う——揺らぎがなければ、何が残るのか。
揺らぎのない鏡に、何が映るのか。
揺らぎを止めた境界は、膜ではなく——壁になる。
壁の向こうに積もったものは、どこへ行くのか。
——「御岳家との往復書簡断片」(羽鳥家文書庫 乙種第十二号)
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論争は長く続いた。しかし御岳家は次第に「揺らぎを忌避する」方向へと傾き、羽 鳥家との対話を断ち切った。
正確な断絶の時期は不明だが、文書上の記録は突然途絶える。
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御岳家からの最後の書状には、こうあった——
「揺らぎを肯定する者と、これ以上言葉を交わすことはない。
揺らぎは管理されるべきであり、我らはその方法を見つける。
貴家の協力は不要だ」
——羽鳥家はこれへの返書を書かなかった。
書状の余白に、一行だけ記されている——
「揺らぎを管理しようとした者の行方は、歴史が証明する」
——同文書
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御岳家のその後は、羽鳥家の記録には一切現れない。
陽子は、御岳家について尋ねた澪に、こう答えたという——
「御岳家がどうなったかは、私も詳しくは知らない。
ただ——揺らぎを止めようとした家が、
揺らぎなく続いているということは、ないと思う。
揺らぐことが、続くということだから」
——羽鳥陽子(如月澪への談話)
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> ★ 澪の考察
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> 御岳家の「揺らぎを管理する」という思想は、
> 千年の後に——神代朔也の「完全同期思想」として再び現れた。
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> 「揺らぎはバグだ」「ズレは修正すべきだ」という論理は、御岳家の言葉と構造が同じだ。
> 歴史は繰り返す——という言い方はしたくないが、
> この類似を記録しておくことには、意味があると思う。




