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マドレーヌ14歳、晩夏。~お弁当づくりに悩みは付きもの〜

「うぅ~〜ん」


 湯船の縁に頭を置いて、ぷかりと浮かびながら思わず唸り声を上げる。


「どうした?」


「明日のお昼ごはんが決まらないの〜」


 侍医局勤務日には毎回具材を変えたサンドイッチやブリトーを持参しているのだが、めぼしい料理は粗方出し切った感がある今日この頃、そろそろネタが尽きてきた。


「前と同じので良いんじゃない?」

「そうそう。マディの料理は大抵おいしいし」


「んー、でもなぁ…」


 フルンなら同じものでも良いと言ってくれるだろうけれど、お代を貰っているし、何よりも食事抜きでぶっ倒れたくらいには食に興味のなかった彼が楽しそうにお昼ごはんを食べているのを間近に見れば、手を変え品を変え、色々なものを食べさせたいと思うのが人情である。


「もうちょっと考えてみる」


 思い返せば前世の、ずっとずっと昔にもあった懐かしい悩みだ。あの子が通った小学校も中学校も給食があったのだけれど、夏や冬の長期休みには昼食用にお弁当を作っていたのだ。始まりは学童保育がお弁当必須という現実的な理由だったと記憶している。けれど、あの子はお弁当が好きで、普段は余り食べないのにお弁当にするとたくさん食べるから何時しか習慣になって、休みの日でも「お弁当の日」を作ったりもしたっけ。

 動画を見ながら本を見ながらお手本通りに作った筈が名状し難い禍々しいナニモノかを生み出してしまったゆえにキャラ弁は早々に諦めたが、彩りとかおかずのバリエーションとかに変化をつけて、なるたけ同じに感じさせないようにした。食べる時間が楽しいものだと感じて欲しいという自己満足以外何ものでもなかったけれど、やっぱり空のお弁当箱が返ってくると嬉しいものだ。あの時は、何を作ったろうか。定番だけど唐揚げにミートボール、ハンバーグ、オムレツ、厚焼き玉子。きんぴらや焼きびたし、野菜を胡麻やおかかで和えたものなんかの作り置きしたおかずを隙間に詰めていたような気がする。


「そうだ!」


 *****


「今日はボリュームたっぷりのサンドイッチにしてみました」


「わぁ!え、ねえ、これって…」


「焼いたパンで具材を挟んでるんです。間にもパンがあって食べ応えありますよ!」


 バスケットを覗き込んだフルンの目が大きく見開かれる。恐らく初めて見たであろう今日の昼食は、こんがりトーストした3枚の薄いパンで肉厚な鶏胸肉のグリル、両面焼いた目玉焼き、カリカリに焼いたベーコン、トマト、生食用の葉野菜をサンド。からしマヨネーズの代わりにピリリと刺激のある薬草を刻んで混ぜたマヨネーズを効かせた、特製アメリカン・クラブハウスサンドだ。


「おかずはベイクドポテトとピクルスです。ボリューム満点のサンドイッチなので竹串を刺したまま持ってください」


 一緒に暮らし始めて間もない頃、新しい環境に慣れず食も進まず寝付きも悪かったあの子を強引にピクニックに連れ出し、散々体を動かして疲れさせた時に食べさせたのが、このサンドイッチだった。子供用には単なるマヨネーズを、大人用にはからしマヨネーズを塗ったのだけど、「そっちも食べたい」と言うが早いか注意する間もなく横から齧り付いてびゃんびゃん泣いた、思い出の一品だ。そうそう、その後は付け合わせのフライドポテトをばくばく食べてひと心地ついたんだっけ。


「信じられない…、夢みたいだ」


「一度に色んな具材が食べられますもんね」


 現世の一般的なサンドイッチは1種類か2種類の具材を挟むだけ。そこへ持って食材の層がカラフルな断面を作るサンドイッチが登場したものだからだろう、フルンはまじまじ見つめて呟いた。


「好き」


「食べてないどころか手にとってさえもいませんけれど?」


「食べなくたってわかるよ。本当に、大好きだ」


 なるほど、味も勿論大切だけれど、食欲を呼び起こすには見た目も大事だと再認識する。「見てわかる旨さ」にも今後は気を付けていきたいものだ。真っ赤なお茶を淹れる手にも自然と力が籠もる。



「さ、じゃあ食べましょう!それでは、いっただきま~す」


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