ミラベル14歳、晩夏。~夢想の聖女〜
「あーもう!腹が立つったらないわ!」
誰しもが認める“夢想の兄妹”をもじっただけでなく、名声や功績を掠め取ろうとしている女がいると噂が立っている。しかも、よりによって“聖女”を名乗っているのだとか!話に聞くだけでも腹が立ってしょうがない。
「ほら、お茶が温くなってしまいますわミラベル。ゆっくりお飲みになって?」
「そうそう。直接恩恵を受けている貧しい者達や話題に飢えている一部の人々にしか信じられていない、滑稽な笑い話よ」
今日はモニカを筆頭に、王立学院でともに学ぶ女学院生とのお茶会。前年に催され大好評を博した学院祭の展示や発表について話し合うという口実で集まったのだけれど、女子がたくさん集まれば、噂話に花が咲くもの。そうなれば自然と口に上るのは、共に学んだ一人の同窓生の事。
「それは知っているけれど、でもやっぱり嫌な気分よ」
「モニカ様やミラベル様は特に仲が良かったものね」
「ミラベルは御三方を、早い時期にお見掛けしていたのよね?」
「ええ、コメルシー家にお招きいただいてね」
「羨ましいわ」
少しずつお茶会にも顔を出して、不意な物音や人の動きにまだ怖さはあるけれど、以前のように笑えるようにもなった。だからこそ、同じ思いをしただろうマドレーヌ様が、再び王都にやって来て街を歩いてあちこちに顔を出している、その強さが実感を伴って理解できる。そんな彼女の苦難も知らず、存在をも乗っ取るような聖女に腹が立って堪らない。けれど、子供の身でできることなんて愚痴を溢すくらいのことで。
「どうにか、わたくし達で戒められないものかしら」
「ぇ」
穏やかな声でさらりと呟いたのは、ひと頃は目立つのを嫌っていた、あのモニカだった。そうだ。彼女はマドレーヌ様に救われたのだと言って、新たな生を与えられたのだと言って、心底慕っているのだった。
「そうね」
「やりましょう」
「やるしかないわね」
「罪の重さを思い知らせなくちゃ」
静かな発言を皮切りに口々に賛同の声が上がる。皆、大人の世界に口出しなんて出来ないと思って何も言わないだけで、心には不満があったのだ。
「そうだわ!きっと、わたし達にしか出来ない方法があるはずよ!」
敬愛する同窓生の存在を騙ったこと、その罪の重さを、思い知らせてやらなくちゃ!




